任期満了に伴う大阪府知事選は27日投開票され、無所属新人の弁護士でタレントの橋下徹氏(38)が、いずれも無所属新人の弁護士の梅田章二氏(57)=共産推薦=と元大阪大大学院教授熊谷貞俊氏(63)=民主、社民、国民新推薦=ら4人を破り、初当選を果たした。多くのテレビ番組に出演した知名度で、選挙戦は圧勝。同じタレント出身の東国原英夫・宮崎県知事の活躍ぶりも追い風になったとみられる。橋下氏は今後、約5兆円もの府債発行残高を抱える赤字財政の再建など多くの課題に取り組むことになる。
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午後8時50分過ぎ。橋下氏は、大阪市北区の選挙事務所にスーツ姿で現れた。「エネルギーと爆発力で、一から大阪を変えていきたい!」。かすれた声ながら、しっかりと宣言した。ボランティアとして参加した北野高校ラグビー部のOBがユニホーム姿で「バンザイ」コールを始めると事務所内の気温が一気に上昇。当初、大阪府内の市議会議員らわずか6人だったスタッフは、高校の先輩、後輩も加わり、数十人になっていた。
万歳三唱での満面の笑みから一転、赤字財政の再建について尋ねられると「かなりハードにやり抜きます。府職員の方には、破産した会社の社員であるという意識を持ってもらいたい」と表情を引き締めた。
橋下氏は東京に生まれ、幼くして父親が他界。小学校5年で大阪に移り、母親が昼も夜も働きづめで橋下氏と妹を育ててきた。住まいは大阪市東淀川区の府営住宅。部落差別問題など激しい地区で中学時代まで過ごした経験を「自分の原点」と明かしている。
選挙期間中、橋下氏は「東京の弁護士さんはいいスーツを着て、いい車に乗って、いい腕時計を買いなさいという。でも、大阪の方は僕の心を見てくれる。今の僕があるのは、大阪のおかげ」と何度も力説した。
タレント業を含めて年収3億円。安定した生活を捨てての府知事転身には、大阪への恩返しとの思いがある。
茶髪は黒髪に、革ジャンはスーツに、サングラスは色なしに…。外見のトレードマークは選挙を機に変わった。選挙事務所には、やしきたかじんから大きな鯛が届いた。自著では「うそをつけないやつは政治家と弁護士にはなれない」と書いたこともあり、毒舌ではたかじんにも負けないが、これからは何より言行一致が求められる。
当選一夜明けとなる28日には、橋下氏は早朝から翌未明までにテレビ、ラジオ26番組に出演。早速、大阪の“売り込み”を始める。