OG VOL17 『突・電脳号』HELLO OG! INTERVIEW 蒼い目の北斗神拳伝承者
199X年世界はオタクホロコーストの炎につつまれた。マンガ海は枯れアニメ地は裂け……あらゆる生命体がゲームのように絶滅したかにみえた……
だが…オタクは死滅してはいなかった。「ユー・アー・ショック!」微笑み忘れたオタク顔など見たくはないさ!とばかりに、海の向こうからあの男がとうとうやってきた・・・。
その男の名はジョシュ・バーネット。2008年、世紀末救世主伝説が今ここで解き明かされる!!!199X年世界はオタクホロコーストの炎につつまれた。
マンガ海は枯れアニメ地は裂け……あらゆる生命体がゲームのように絶滅したかにみえた……だが…オタクは死滅してはいなかった。「ユー・アー・ショック!」微笑み忘れたオタク顔など見たくはないさ!とばかりに、海の向こうからあの男がとうとうやってきた・・・。その男の名はジョシュ・バーネット。2008年、世紀末救世主伝説が今ここで解き明かされる!!!
![蒼い目のケンシロウが見たイスカンダルの彼方とは何か!?](/contents/023/292/680.mime4)
マジおせぇなー、なにが蒼い目のケンシロウだってんだよ・・・・・・(ブツブツ)。
あ、あのぉ、すいません(困)
なんですか?(怒)
(資料を見ながら)このジョシュさんって方が人生のベースにしてらっしゃるという『北斗の拳』についてなんですけど・・・・・・。
はい?
なんて訳せばいいんですか?
え!? まさか『北斗の拳』を知らないんですか?
すいません。私、アメリカの方が長いもので、日本のマンガとかってあまりというか全然知らないというか、ぶっちゃけ興味ないんですよね(テヘッ)
『ユー・アー・ショック!』。と、とにかくそれはそのまま『北斗の拳』って言ってもらえれば大丈夫です。
「(アメリカンサイズな遅刻などまったく気にしていないような笑みを爆発させながら)ホァター! コンニチワ、オマエハモウシンデイル」
・・・・・・。ジョシュさん、お待ちしておりましたよ。
「いやさ、ちょっとここへ来る前にお腹が痛くなっちゃったもんでね、ちょっと遅れちゃったんだよ(ペコリ)」
おいおいちょっとどころじゃねーし! お腹が痛いって言い訳、今時子どもでも言わないってば(小声で)
「アー」
そこ!訳さないでいいですから。あぁ、新年1発目から思いやられるよなぁ・・・・・・。さて、08年の頭をデデンと飾っていただくのは、これまでUFCにK-1、PRIDE、パンクラス、新日本プロレス、果てはアントニオ猪木さんが勝手気ままに牽引されているIGFにも参戦されている孤高のファイターであり、日本のオタクセレブも認めるほどのハイパーオタク、ジョシュ・バーネットさんです。って、ちょっと聞いてます?
「あぁ、聞いてるよ(テーブルの上にある『北斗の拳 〜審判の双蒼星 拳豪列伝〜』のパッケージに夢中)
ジョシュさんに『我がオタク人生に一片の悔いなし』ってな感じの話をしてほしくてですね・・・・・・、ってちょっと聞いてます?
「オッケーオッケー!(引き続き『北斗の拳 〜審判の双蒼星 拳豪列伝〜』のパッケージを無心に見つめながら)」
あ、あのぉ?
「(唐突に)このPS2の『北斗の拳』のゲームは、アーケードから移植されたいちばん最新のバージョンのやつかな? 」
ですね! 宿命に導かれし10人の戦士を操作する対戦ゲームです。これまでの2D格闘ゲームにはない“一撃必殺奥義”という画期的なシステムや細部までこだわった演出が好評な大人気タイトルですよ。まぁ、宿命に導かれし10人の戦士にハート様が入ってるのはいかがなものかと思いますけど(苦笑)。
「『ヒデブッ!』ハート様はたしかに違うよね。でもさ、これずっと欲しかったんだよ! 日本に来たら絶対に買おうと思ってたんだ」
是非、お帰りの際にお買い上げください。で、ジョシュさん、今回は格闘技関連の話はほとんどするつもりはなくてですね、日本のアニメやマンガ、ゲームの話がしたいんですけど?
「オーケー! ノープロブレム。日本のアニメや特撮は小さい頃からよく観ていたんだよ。ボクらの世代だと、ケーブルテレビで『宇宙戦艦ヤマト』や『ウルトラマン』、『ゴジラ』なんかが放映されていてね、好きでよく観ていたよ」
『宇宙戦艦ヤマト』や『ウルトラマン』はボクも子どもの頃よく観ましたよ。
「最高だよね。でさ、それから成長するにつれて、日本の文化がどんどんアメリカに入ってきて、こうして大人になった今でもお金を稼いではアニメのDVDやコミックを買い集めるようになっているというわけなんだ」
闘うためのモチベーションにもなっているわけですね。ちなみに初めて観た日本のアニメはなんだったんですか?
「『宇宙戦艦ヤマト』だね。5、6才の頃だったかな。ちょうど朝の時間帯に放映していて、学校に行く準備をしているときに家族と一緒に観てたんだ。ボクのファミリーはみんな『宇宙戦艦ヤマト』が大好きだよ!」
朝っぱらから『宇宙戦艦ヤマト』を家族全員で観てたんですか?
「そう、バーネット家全員でね。毎回毎回、ハドウホウ(波動砲/ヤマトが持つ究極の艦戦兵器)が発射準備に入って、コックピットでマモル・コダイ(古代守/主人公)が引き金を引くシーンになると、みんなで『ワーッ!!』って盛り上がってさ、毎回ラストシーンに出てくる『人類絶滅まであと何日』っていうメッセージには家族全員がソワソワしながら手に汗を握っていたよ」
アハハハハ! 家族全員で一路イスカンダルを目指してたわけですね(笑)
「イエス! イスカンダルがある14万8千光年の彼方までファミリーの希望が毎朝飛んでいってたね。ヤマトのみんながコスモクリーナーDを手にしたときは感動したよ」
あのぉ・・・・・・。
ん!? どうしました?
コスモクリーナーDって?
放射能除去装置のことです。西暦2199年にガミラス帝国が地球に放った遊星爆弾によってまき散らされた放射能を除去することができる宇宙でただひとつしかない装置のことです。
ガ、ガミラス帝国? 遊星爆弾?? っていうか2199年!?
そ、そこらへんはスルーしてください。で、ジョシュさん。ジョシュさんのオタクっぷりの原点が『宇宙戦艦ヤマト』ってのはうなずけますね。『機動戦士ガンダム』や『新世紀エヴァンゲリオン』などのアニメブームの先駆けといっても過言じゃないですから。
「だよね。『宇宙戦艦ヤマト』はもうホントに子どもの頃夢中だったよ。それが日本のアニメだったということをそれほど認識して観ていたわけではなかったんだけど、とにかくプレゼンテーションがそれまでに観ていたアメリカのアニメと比べて全然変わっていて、何か特有のものがあるというか、『何か違うぞ、これ?』って感じで。で、それが日本の物だと知ったとき、『アメリカで日常的に流れているアニメとは全然違っているよ!』ってものスゴく日本の文化に感心したね」
![ミサ・ハヤセ LOVE 超時空で感じた日本アニメの魅力とは!?](/contents/023/292/699.mime4)
特にどのあたりにそういったものを感じられましたか?
「うーんそうだね、やっぱりアメリカのアニメなんかよりも人間的な感情がわかりやすく描写、演出されているところかな。 人の思っていることや考えていることがホントによく伝わってくるんだよね。そういうところに心から感心して、できる限り『宇宙戦艦ヤマト』を含めた日本のアニメや特撮ものの作品は観るようにはしてたね」
確かにアメリカのアニメ比べて日本のアニメは子ども向けのものですら描写が細かいというか、多少ややこしいというか、人間臭い部分は過剰に持っていますよね。当時の同世代のお友達なんかもジョシュさんと同じように熱狂してたんですか?
「いや、8才だ。8才まではそれほどではなかったね(キッパリ)」
8才ですか! 数字があまりにも具体的なんですけど?
「『アイ、オボエテイマスカ』(ニンマリ)」
もしかして、マ、マクロス?
「もちろん『マクロス』に決まってるじゃないか!」
決まってるじゃないか!って(笑)。『超時空要塞マクロス』もお好きなんですね。
あのぉ・・・・・・、すいません。ちょ、超時空って? (困)
超時空とかは無視で、『マクロス』だけでいいですよ(苦笑)。
「マクロス・イズ・ベスト!(サムアップして)」
突如地球に墜落した全長1kmにも及ぶ超巨大戦艦マクロス、地球外知的生命体の存在を知った人類、国家間の利害を越えた人類統合政府の樹立、変形ロボットに宇宙を救うアイドル歌手、希代のイケメン主人公一条輝をめぐるリン・ ミンメイ(宇宙を救うアイドル)、ヒロインの早瀬美沙との泥沼三角関係、奇想天外な設定が奇跡的なハーモニーを見せた伝説のアニメです。
「アメリカンバージョンでは『ロボテック』っていうんだよね。でも、やっぱり『マクロス』ってタイトルのほうがクールでエキサイティングだよ。この作品が放映されたとたん、ボクの周りのみんなが俄然盛り上がったんだ。もちろんボクも一緒に盛り上がった。『宇宙戦艦ヤマト』とは違って、見た目はロボットものだったから子どもだったボクはすぐに虜になってさ、かといってそこで描かれる人間関係なんかがロボットものだからって低年齢層をターゲットにしたものじゃなかったものだから、逆にまたボクの心に響いたんだよね。リン・ミンメイやミサ・ハヤセといったキャラクターは今でも超LOVEだよ!」
どちらかというと?
「ミサ・ハヤセだね(即答)」
アハハハハ! ではジョシュさんのオタク創世記は『マクロス』で加速したといっても過言ではない?
「その通りだね。日本のみんながアニメというものにハマるきっかけといえば、ロボットアニメの金字塔である『機動戦士ガンダム』がやはり定番だと思うんだけど、ボクは俄然『マクロス』、アメリカでは『マクロス』!(断言)」
アメリカでは『マクロス』!(笑)
「まぁ、『マクロス』は『ガンダム』よりも先に放映されていたから、パイオニア的な人気があったっていうことも関係があると思うけどね」
ジョシュさんは『ガンダム』にはいかなかったんですか?
「もちろん大好きに決まってるじゃないか! 『ガンダム』が好きじゃない人間なんてこの地球上にいるのかい? いたら今すぐに連れてきてくれよ!!(首をかっ斬るポーズで)」
いませんいません! いませんてっば(苦笑)
「でもね、『ガンダム』がボクの前に登場したのはもう少し大きくなってからだったから、もちろんものスゴい作品だけど、『マクロス』と比べると衝撃度はおよばなかったね。でも多分さ、今でも『マクロス』のほうがアメリカの子どもたちには人気があるんじゃないかなって思う 」
今もジョシュさんの中では『マクロス』は『ガンダム』よりも上位概念に?
「そのふたつの作品はあまりにも伝説過ぎて比べるのは乱暴なことだけど、答えはイエスだね。このアニメには心の底からやられたよ。複雑なストーリーはまだ子どもだったボクには難しかったけど、ボクの心に深く焼き付いたんだよね。まぁ、アメリカ版はバイオレンスなシーンがオリジナルから見事にカットされてたみたいだけど(溜息)」
『マクロス』との出会いでオタク度はますます?
「そうだね。気づいたらアニメが大好きになって、10才くらいの頃から、アニメやマンガ好きの友達と一緒に、雑誌やビデオとかで日本のアニメやマンガの情報を集めるようになって、もっともっと興味を持ちはじめたんだ」
絵に描いたようなオタク少年の集まりですね。その頃にもなると、オタク仲間も随分と増えてたんじゃないですか?
「ノー。そんなにいるわけないじゃないか。マイノリティって言葉じゃ片付けられないぐらいまったくいなかったよ(苦笑)」
どこの国でもオタク事情は同じなんですね。
「クレイジーだって思う人の方が多かったのは悲しいかな事実だね。それに拍車をかけたのが『AKIRA』って作品さ」
![ママ公認のマイノリティ・・・。アメリカンオタク初期型とは何か!?](/contents/023/292/702.mime4)
日本を代表する作家、大友克洋さんが描いたSF超能力アクションですね! 第3次世界大戦後の東京(ネオ東京)と近未来の荒廃した世界を舞台に、秘密機関に超能力者にされた少年少女たちと、暴走族の少年たちが織りなす運命を描いたウルトラ大ヒット作品です。
「『AKIRA』の登場はアメリカにおける日本アニメという世界でのひとつのビックバンだったと思うよ。ボクはもう観た瞬間にとても素晴らしいと思ったんだけど、随所に見られるリアル過ぎる表現技法やストーリーの奥深さ、ビル崩壊シーンの緻密な描写なんかがもうあまりにも衝撃的過ぎて、周りはどういう反応をしていいかまったくわからなかったみたい。それはもうとても新し過ぎるものだったから、そういう中で、『こんなのはクレイジーだ!』って受け止めた人の意見が多くなっちゃって(苦笑)」
世界の大友が放った最高傑作をもってしても日本アニメの輪を広げられませんでしたか。
「いや、そうとも言えないんだよ。もちろん、マイノリティってことには変わりないんだけど、日本のアニメをそういうふうにクレイジーだって思っていた人もいれば、かっこいいと思った人もいるわけでさ。でも、当時はボクみたいに『AKIRA』のことを賞賛していた人間が、同じような気持ちの連中と話す機会ってビックリするほどなかったんだよね」
オタクコミュニティが存在しなかった?
「そうだね。今みたいに、インターネットのBBSとか、ファンが集まるチャットルームとかがなかった時代だからさ。でも、それがさみしいことだとはまったく思わなかったけどね」
当時はあくまで“個”の世界だった?
「自分としてはそういった日本のアニメやマンガがただ好きだと思ってただけであって、意見を交換したいとか、同じ世界観を持ったみんなと集まりたいというわけではなかったね。なんだろう、アメリカンオタクスタイルの初期型とでもいうのかな。ザクでいえば旧ザクみたいなものだよ」
アハハハハ!
「その頃のボクはもう完全にアメリカンオタク初期型だったわけでさ、独自研究なんかも怠らなかったよ。自分の好きなそれらの作品が日本のものだということは既に理解していたし、雑誌とかテレビとかビデオとか、自分が好きなものがいろんな場所に登場していることも随時チェックしていたね」
ジョシュ少年を虜にしてしまった日本のアニメやマンガの魅力って、実際に日本に住んでいるとごく当たり前な世界観なわけで、ジョシュさんの話はあらためて“日本の良さ”みたいなものを再認識できて興味深いですよ。
「日本のアニメやマンガは素晴らしいのひとことだね。作品のメッセージを表現をするのに芸術的な面がとても強いし、子ども向けのようなわかりやすいストーリーもあれば、長編巨編の映画にも負けないぐらい感動できるものもある。深い人間関係やコミュニティが描かれいてるストーリーなんてさ、アメリカのアニメやマンガには今だあり得ないよ。アメリカのアニメは表現がオーバー過ぎてちょっとうっとうしいんだよね。もちろん、『アイアンジャイアント』のような素晴らしい作品もあるにはあるけど、やっぱりボクは日本のアニメが世界でナンバー1だと思ってる。しかもさ、残念なことに、アメリカでは未だアニメやコミックは“子ども用”の娯楽としてしか認知されていないからね」
海外の方が日本に来て、電車の中でコミックを読んでいる大人がたくさんいることに驚いたって声はよく聞きますね。そんなアメリカンオタク初期型のジョシュさんにご両親は何も?
「親はまったく反対しなかった。特にママはアニメを観たりマンガを読んでいると想像力が出てくるからそういう面で勉強になると逆に奨励してくれたね。ママ公認さ!」
ママ公認オタク! 他のアメリカ一般家庭もそうだったんでしょうか?
「うーん、それはケースバイケースかも(笑)。 いや、やっぱりそんな家庭は多くはなかったかな。ボクはマンガだけが好きだったんじゃなくて、“読む”ことが好きだったんだよ。マンガだけじゃなく、たくさんの小説や様々な哲学書を読んでいたよ。あと、アニメと同じくらい、映画を観るのも好きだった。アニメやマンガだけじゃないわけだから、両親に止められることはなかったよ。でも、たださ・・・・・・(困)」
ただ?
「(小声で)今つきあっている彼女の話なんだけど、小説や映画と同じように、ボクが面白いと思ったマンガを読んで欲しいって読ませようとするんだけど、これが続かないんだよ、アニメは渋々ながら一緒に観てはくれるんだけどね」
アハハハハ! そこらへんの事情は日本でも同じですよ。
「マンガを読む女性はアメリカ人女性より日本人女性のほうが多いんじゃないかな。 今はアメリカでもけっこう流行ってるけど、日本には少女マンガっていう特殊な世界観があるからなぁ」
アメリカには少女マンガという世界観はないんですか?
「ないね。しかも日本では少女マンガを男も読んでたりするでしょ? スゴいことだよ。ボクはほとんど読まないけどねぇ」
ちなみに、ジョシュさんが『彼女にも読ませたい』って思ったマンガっていうのは?
「『剣風伝奇ベルセルク』だね(即答)」
biography? 伝記??(汗)
「いや違うよ、“記”じゃなくて“奇”だよ(ムカッ)」
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