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一言メッセージ :宇宙市民第*号(1号は石川三四郎):本籍は宇宙、寄留地は日本

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2008年1月12日

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日記を続けるには

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<日記を続ける方法>

新しい年の始まりというということもあるのだろうか、新聞の「男のひといき」という欄に、日記を続ける方法についての投書があった。書店から、3年連用日記を買って来たことによって、以来欠かさずに日記を書くようになったというのである。

この男性は、連用日記を購入することの効用を、二つあげている。
まず第一に、金を出して店から購入した以上、途中で投げ出して日記帳を無駄にしてしまっては勿体ないという意識がはたらき、日記をちゃんとつけるようになる。第二に、連用日記は前の年の同月同日に何をしたか参照できる点で役に立つという。

友人のなかには、克明に日記を書き続けている男がいて、その部屋を訪ねた際、大学ノートに書かれた十数冊もの日記がずらっと並んでいるのを見て驚いたことがある。永井荷風は日記を書くことを一日の重要な仕事にしていたそうだが、私の友人も日記をつけることが習慣になり、もうその定常化された軌道から離れられなくなっていたのである。

この友人はなかなかの秀才で、旧制の静岡高校にトップで合格して東大に進んだのだが、別のもう一人の友人は、さらにその上を行く秀才だった。彼もきちんと日記をつけていたけれども、ある日を境にぷっつり日記を書くことを止めてしまった。彼の妹がその日記を読み、記事の末尾に兄を冷やかすような書き込みをしたからだった。

私はこれらの秀才とは違って、極め付きの鈍才だったから、これまでに日記を継続的につけたことはない。それでも30才頃までに、ノートに二、三冊分くらいの日記を書いていた。しかし、これらの日記は、結局自分で焼き捨ててしまった。その中に、あまりにも多くの「私的な告白」が書き込まれていたからだ。

こうして60になるまで、日記らしい日記を書くことなく過ぎていた。
退職後に晴耕雨読の生活に入ることを予定して迎えた60才の正月、本屋から5年連用日記を買ってきた。百姓仕事をすることになれば、前年、前々年の作業状況を参照する必要が出てくるだろうし、それよりあと5年生きていられるかどうか、自分で試して見たかったからだ。

私は自分の寿命については悲観的な見方をしていて、長い間、60までは生きられないだろうと思っていたのである。それが60まで生きのびたから、この先5年間、生きていられるか試したくなったのである。だから、最初のページには、「この日記帳を終えるまで生きているかどうか分からないが───」という文章を書き込んだ。

そして、5年が過ぎると、また、「あと5年生きているかどうか不明であるが」という書き出しで二冊目の5年連用日記をはじめる。かくのごとくにして私は80過ぎまで生きてきたのである。その間に5年連用日記を4冊書き終え、現在は5冊目に入っている。

私が20年の余、日記を一日の欠漏もなく書き続けてきた理由は、新聞で読んだと同じ理由からだった。日記帳は約3000円するから、これを無駄にしたくないと思うし、農作業をやっていく上で毎年の記事を参照することは大変役に立つからだ。私が長年の喫煙を止めることが出来たのも、連用日記のおかげだった。禁煙を始めた最初の日の日記に、「禁煙第一日目」と記入し、それを「第二日目」「三日目」と記入して行って、ついにタバコと縁を切ることができたのである。

日記の続いた理由をもう一つ挙げれば、5年連用日記は各ページが5段に仕切られていてスペースが少ないため、私的な感情やら、告白やらを記入する余地がないことなのだ。記事の内容は、どうしても行動記録が主になる。これにその日の社会的なニュースを追加すれば、もう規定の欄に余白がなくなる。

他人の目に触れることを恐れながら書く日記は長続きしない。公文書的な日記だと、長続きするのである。

森鴎外は学生時代から日記をつけていた。彼の言い方を借用すれば、寝る前に日記を書いてその日その日を「仕切っていた」のである。そして、その内容は行動記録が主になっていて、私的な感情を表白しているところはほとんどない。唯一の例外は、離婚した前妻登志子が死去したと知った日の記述くらいなのだ。

日記を続けるにも、感情をぶちまけたいというような欲求は抑え、私情を節した禁欲的な姿勢をとる必要があるのである。

(上掲の写真は、5年連用日記の内部)

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