ガソリン国会 民主炎上
2008年1月28日 AERA
終わったと思ったらまた始まった国会。ガソリンで追い込むと言うけれど、与党を攻める前に足元は大丈夫? 自ら「炎上」しそうですよ。
福田康夫首相が、都内で開いた自民党大会で「立党以来の最大の危機」を訴え、
「国民本位の政治を確立して」
「国民の声に耳を傾け」
など、30回以上も「国民」を連発した1月17日。民主党の若手議員は、大阪に集まっていた。
大阪府知事選の応援とあわせ、若手でつくった「ガソリン値下げ隊」が50人ほど、道頓堀でのぼりを立て、寒空の下、街ゆく人たちにビラを配った。
準備万端のはずだが
民主党は、予算関連法案に盛り込まれる道路特定財源の暫定税率延長阻止をめざす。これで、ガソリン代を1リットルあたり25円引き下げようというのだ。「10年後の道路より明日のガソリン」(若手議員)と訴えて、予算関連法案の審議を3月末の期限切れまで持ち込む。いったんガソリンを値下げさせ、国民にメリットを実感してもらう。その後、衆院で与党が再議決に持ち込めば、参院で首相の問責決議案を採決して審議拒否、解散か内閣総辞職を迫る、というシナリオ。
で、急遽つくったのが「ガソリン値下げ隊」である。国会対策副委員長を2人増やして6人にし、それぞれを「班長」として、その下に衆院の当選1〜2回の議員を組織。通常国会初日の18日には「道路特定財源問題に関する理論武装の会」を開き、政策の中身もおさらいした。
まさに準備万端、のはずだが、いま一つ党内は盛り上がらない。その大きな原因は、司令官の小沢一郎代表にある。
臨時国会も最終盤を迎えた11日の衆院本会議。補給支援特別措置法の採決を、小沢氏は大阪府知事選の応援を理由に退席した。民主党議員のほとんどは事前に知らされていなかった。
「党首はなぜいないんだ!」
与党席から飛ぶ野次に、ある若手は、
「いるよ!」
と返した後、
「まさかと思って一応振り向いたら、いなかった」
鳩山由紀夫幹事長が何度もこの件で謝罪したのに対し、小沢氏は16日の会見で、
「国民にとっても民主党にとっても大事な法案ではない。反対の意思表示はすでにしている。あとは数合わせの本会議でしかない。結果は目に見えている。批判は理解できない」
と開き直り、一切謝罪しなかった。独りよがりで、わがまま、国民に説明を尽くさない。また「悪い癖」(側近の一人)が頭をもたげ始めたのだ。
「代表はいったい何を考えているのかわからないと、下のほうは疑心暗鬼になっている」
ある若手はため息をつく。
くすぶる「造反」の動き
これを海千山千の自民党が指をくわえて見ているわけがない。「こんな司令官について行っていいのかと思う民主党議員は多い。こういうときこそ、手を突っ込まなきゃ」(三役経験者)
すでに民主党内には、暫定税率問題で党の方針に反発、与党に同調しようという「造反」の動きがある。その一人、大江康弘参院議員は、補給支援特措法の採決でも退席した。造反が増えれば、参院での与野党逆転だって危うくなりかねない。
「本当は特措法で『造反』したかったのをぐっと我慢したのに、小沢氏の行動を見て腸が煮えくり返った議員だっている」(中堅議員)
「ガソリン国会」は、民主党炎上の危機もはらんでいる。
編集部 秋山訓子
※各媒体に掲載された記事を原文のまま掲載しています。