社 説

空港と広域戦略/県単位では生き残れない

 国際定期路線の存続で揺れる地方空港が目立ってきた。東北では今月、運休方針が決まっていた秋田―ソウル線の運休撤回を求め、秋田県の寺田典城知事が韓国で直談判。「搭乗率70%確保」を事実上の条件に回避するという折衝事があった。

 ただ、これも打開策が見えない中での窮余の一策か。昨年の航空会社の乗り入れ自由化を契機に空港間競争が激化しているだけに、県益を超えた広域圏で、各空港の機能や役割分担を見直す時期にきている。

 秋田空港のソウル線開設は2001年。東北では仙台、青森、福島に続き4番目だった。

 就航直後から搭乗率は採算ラインの70%を割り込み、近年は50%台で推移。一時期、盛岡駅との間で無料リムジンバスを走らせるなどしたが、需要拡大にはつながらなかった。

 国際線を維持するために自治体は補助金をつぎこんだり、減免措置を講じたりしている。

 秋田県の場合は(1)空港着陸料の9割減免(2)空港ターミナルビル使用料の7分の4補助(3)韓国からの利用者が秋田に宿泊した場合の3000円補助(4)一校100万円を上限にした一生徒当たり3万円の修学旅行補助―などだ。

 一度、費用対効果を精査し、他空港との連携策なども含めて最善策を検証すべきだろう。

 そもそも、東北でソウルに4路線も必要かという議論もある。国が「地方空港の国際化」を引きずりすぎた結果だが、それぞれの県レベルで国際線を維持できる状況にはない。秋田空港の連携先については、航空会社も同じ青森空港が考えられる。

 近年、日本からの利用者よりも韓国からの利用者が多いというソウル線の実態を考えれば、東北の広域観光ルートを充実させることにより、共存が可能になる。青森―ソウル線の搭乗率も60%前後で推移している。共倒れにならぬように、相互に広域戦略に切り替えるべきだ。

 東アジアなどからの誘客拡大を図ろうと、昨年6月、東北経済連合会、JR、旅行会社が参加し、東北観光推進機構が発足した。東北ならではのモデルルートの開拓や、国内外への東北の観光資源のPR、市場調査などを展開している。こうした場からも、県の枠組みを取っ払った空港利用と広域観光の必要性を働き掛けてもらいたい。

 貨物だが、福島県は先日、福島空港と関西国際空港(関空)を結ぶ定期路線を利用し、関空経由で貨物を輸出する国際物流ルートの構築に向け、共同ビジョンを打ち出す方針を明らかにした。関空と地方空港の連携は初めてで、「脱成田」をキーワードにした再編の動きだ。東北の輸出航空貨物の9割が成田集中という実態を考えれば、貨物でも空港間連携で優位性を確保できる余地がある。
2008年01月28日月曜日