保育・教育とは何か、をテーマに議論が交わされた全国私立保育園連盟のシンポジウム=昨年12月、福岡市
保育所をめぐる状況が変化している。働く親の増加により、少子化ながらも認可保育所数は約2万3000カ所、利用児童数も約202万人に増加(いずれも昨年4月1日現在)。生活環境の変化、不安や悩みを抱える保護者も増えていることなどから、保育所に求められる役割も拡大、多様化している。こうした状況下であるべき保育とはどのようなものか、昨年12月と今月、福岡市で開かれた会合で議論された。 (酒匂純子)
そもそも「保育」とは何か。幼稚園などが掲げる「教育」とは異なるのか。全国私立保育園連盟が昨年12月開いたシンポジウムでは、保育の原点に立ち返ることがテーマだった。
「養護と教育が一体となったのが保育」。講演した鯨岡峻・中京大学教授は、そう説明した。子どもは子ども「である」一方、大人「になる」。その「である」を受け止め、認めることが養護であり、「になる」を導き、促すのが教育なのだという。その際の教育は、何かができるようにする早期教育のようなものではない。一般的な規範を示すのではなく「○○ちゃんにもっと頑張ってほしいなあ」と保育者の主体的な思いを伝え、導くこと。このため、「保育所も幼稚園も必要なものは変わらない」という考えだ。
全国の保育所は政府の「保育所保育指針」に基づき運営している。政府は保育所が果たすべき役割が変化しているとして、検討会が昨年12月に出した改定についての報告書を受け、2009年4月から新指針を施行する。新指針には教育機能の充実、保護者に対する支援、小学校との連携などが盛り込まれた。
講演後に開かれた議論では、横山正幸・福岡教育大名誉教授が「放任と過干渉が共存した過保護という親のかかわり方により、育ちに必要な生活体験が保障されていない」、田中昭子・あゆみ保育園(熊本市)主任保育士が「親自身、経験が乏しいまま大人になっていることを前提にしないと支援はできない」と語るなど、保護者支援の重要性が強調された。宮里六郎・熊本学園大教授は「できる、できないに目をつむり、子どもの育ちをおおらかに見る保育を再生したい」と、保育士や親たちが保育の原点に戻る大切さを訴えた。
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●夜間保育 高まるニーズ 家庭的って何…続く模索
保育所をめぐる変化の1つに、夜間保育のニーズが高まっていることがある。全国の認可夜間保育所でつくる全国夜間保育園連盟が今月開いた交流研修会では、生活のリズムをどう保つか、家庭的な雰囲気をつくるにはどうしたらいいかなど、夜間保育ならではの悩みや工夫が報告された。
保護者の就労環境の多様化などを背景に、夜間保育は1981年にモデル事業として制度化、95年に一般制度となり、02年には24時間保育も可能になった。夜間保育園は現在、全国に約70カ所。ただ、開設が需要に追いつかず、認可外の24時間託児所などが各地に開設されている。
シンポジウムでは夜間保育所3カ所から保育士が登壇した。だん王夜間保育園(京都市、午後10時まで)の矢原秀昭さんは「夜間があるから子どもを預けて遅くまで働ける、のではなく、どうしても必要とする子どもたちがいるから夜間がある」と主張。飲食店関係など深夜勤務が必要な職種が多く存在する現実を見つめながらも、子どもの利益を最優先し、保護者主体の子育てができるような園と親の協力態勢が必要とした。
エイビイシイ保育園(東京、24時間)は「家庭的とは何か」を模索している。食事前の歌をやめ、保育士も一緒に入浴を始めた。第二どろんこ夜間保育園(福岡市、午前2時まで)の城戸裕子さんは「子どもの昼型の生活を保障するにはこの開設時間が限度」と語った。
連盟の天久薫会長は「夜間保育、長時間保育では親も子どもも負担がかかる。通常保育より専門性が高い保育が必要であり、質の向上を目指す」としている。
=2008/01/24付 西日本新聞朝刊=