55歳のY子さんはのぼせ、ほてり、動悸(どうき)、いらいら、眠れない、などの症状を訴えて病院を受診しました。51歳で月経が終わったころから、からだの変調を感じるようになり、2年前に夫が退職してからさらにひどくなったそうです。
専業主婦として子ども3人を育て上げ、夫の父を数年前に見送り、今は姑(しゅうとめ)の世話をしているとのこと。思うようにからだを動かすことができず、いてもたってもいられない気持ちになるということでした。
程度の差はありますが、40代半ばから50代までの更年期には、さまざまな症状が起こってきます。卵巣機能が急激に低下し、女性ホルモンの量が減少することが大きな原因です。自律神経を安定させる作用が急激に衰えるため、顔のほてり、発汗、めまい、頭痛などの症状がこの時期に出やすくなるのです。更年期のからだの変化と言えます。
一方、こころの変化はどうでしょうか。この年代は家庭内や仕事での役割が大きく変化する時期です。子どもの巣立ち、パートナーとの関係、近親者の介護、健康への不安、あるいはリストラなどで、日常的ストレスがピークに達する人も少なくありません。
このような変化があいまって更年期障害が起こります。Y子さんは、女性ホルモンを補充する治療を受けてからだの症状が改善するとともに、こころの変化にも気づいて対応ができるようになり、徐々に元気を回復しました。
次回は「ホルモン補充療法」についてお話しします。(大阪樟蔭女子大教授・三宅婦人科内科医院医師、甲村弘子)
毎日新聞 2008年1月27日 大阪朝刊