「岡山VS広島」―。道州制議論でよく引き合いに出される対立軸だ。区割りをめぐり、岡山県は中四国州、広島県は中国州を提唱。交通の結節点、人口や経済規模の優位性と持ち味を売りにした州都誘致の思惑もちらつく。
岡山からは「アウエー」になる広島県で三年余り議論を見てきた。かつては「岡山の新聞」と警戒されることもあったが、最近は「話が進まなくなる」と区割りや州都の議論をタブー視する風潮もある。理屈は分かるが、何かインパクトが弱まった印象も受ける。
先日、広島県主催の道州制シンポジウムがあった。気になったのは「道州制で市民生活がどう変わるかピンと来ない」と関心の低さを指摘する声だ。確かに県庁で当たり前のように耳にする「道州制」も、食卓で話題になるとは言い難い。むしろ「ガソリン代」の方が身近な関心事だろう。
でも―。道州制は、人、モノ、情報すべてが東京に集中する中央集権体制を改める大改革だ。道州制ビジョン懇談会座長の江口克彦PHP総合研究所社長は、昨秋出版した著書で「中央集権が続けば地方は衰退し、座して死を待つ以外にない」と痛烈に警告し、小さくても権限と財源を持った州が大胆な税制改革で発展を遂げる「二〇XX年」の日本を描いている。
地方活性化の決定打と期待されるが、同じ地方間でも温度差は大きい。実現の最大のカギは世論の追い風だ。うまく風を起こすには、岡山と広島の対立軸でさえも国民議論の端緒に利用するくらいの“発想の転換”が必要かもしれない。
(広島支社・小橋充)