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◇デジタルアドベンチャー設立の背景をお聞かせください。 | |
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当社は、前身の企業が展開していたインターネットによる静止画のコンテンツ配信事業を引き継ぎ、1998年3月31日に「デジタルアドベンチャー」として事業をスタートしました。
当初は、パソコン向けコンテンツのニーズが高かったので、インターネットプロバイダーを中心にコンテンツ配信をしていたのですが、2000年にiモードが市場に出ると携帯電話の画面用のコンテンツが強く望まれるようになりました。そこで、コンテンツが商品として成長する時期に合わせて上場計画を策定し、2000年7月にスピード上場を果たしました。 |
◇具体的には、どのようなコンテンツを配信しているのですか? | |||
パソコン向けには、大手プロバイダーと提携し、主に人気女優やグラビアアイドル、アーティスト、ペットや風景の画像や動画などを提供しています。携帯電話向けには、利用率が高い待ち受け画面用のコンテンツの提供がメインですが、占いサイトやゲームサイトも人気があります。 |
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また、韓国の芸能ニュースや大人気の韓国ドラマの配信にも注力しており、韓流ポータルサイト「韓流Now!」を運営しています。さらに、コンテンツ事業だけでなく、韓流スターが出演するミュージッククリップだけを集めた音楽DVD「夢のソナタ」、4月から放映のドラマ「悲しき恋歌」のミュージックビデオをはじめとするDVD販売やグッズ販売を行う物販事業も展開しています。 |
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◇齋藤会長がデジタルアドベンチャーに参画されたきっかけは何でしたか? | |
私の社会人としての経歴は、すべてが新日鐵グループでした。その中で、新日鐵化学の専務や、その系列会社で電子部品事業を展開する日本エレクトロニクスの社長を経験しました。鉄から化学、電子部品分野へと仕事が移ったことで、電機メーカーやエレクトロニクスメーカー、通信系の会社の人達との人間関係が出来たんですね。 業界の会合でデジタルアドベンチャーのオーナーと知り合い、会社が資金面で苦労していることを聞かされました。それまでに私は、新日鐵化学そのものをはじめ、系列会社といくつかの会社を上場させた経験があったので、その経験を買われ、上場の手助けをするためにデジタルアドベンチャーに入ったわけです。 |
◇デジタルアドベンチャーで苦労されたことは? | |
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事業は現社長が中心となって展開し、私は上場に向けた実行部隊の責任者となりました。その結果、予定より早く上場することができ、その後私が会長兼CEOとなったのですが、オーナーと経営方針が合わなくなりました。その時期が一番辛かったですね。 |
「公開企業ならば、株主、従業員、取引先などのステークホルダーとの関係や社会的責任も考えてバランスの取れた経営をしなければならない」という私の考え方と、オーナー独自の意見とが対立してしまったのです。その結果、上場半年後に、私はデジタルアドベンチャーを離れることになりました。 |
◇その後、また戻られることになった経緯は? | |
その後の2年間は、オーナーが経営するデジタルアドベンチャーの親会社の会長となり新しい事業に携わっていました。一方、デジタルアドベンチャーは、コア事業を、オーナーがどうしてもやりたかったスペース広告ビジネスやネットでのゲーム提供に移行していました。 しかし、コストがかかり過ぎて、2003年には約7億円の赤字となって経営が危ない状況に陥ったため、その舵取りのために関係者の要望で私が再び戻ることになりました。 |
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経営を軌道に戻すため、私は矢次ぎ早に様々な対策を打ち出しました。まず、オーナーには経営支配から退いてもらい、経営陣を一新しました。業績の足を引っ張っていた2つのビジネスから撤退し、コンテンツ主体の事業に戻しました。過去を清算して気持ちを新たにし、諸施策も初期的効果をあげたことで、その後の決算では順調に利益を出しています。 |
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◇広告とゲームの事業がうまくいかなかった理由をどうお考えですか? | |
広告事業とゲーム事業においては、お客さまに「使いやすい」「遊びやすい」「おもしろい」「買いやすい」というソリューションを提供できなかったことが、成功に結び付けられなかった原因だと思います。 当時の広告事業は、Webサイトの隅にスペース広告を張り、会員の数(約10万人)を頼りに企業から広告代を受け取るビジネスモデルでした。しかし現実的には、どれだけの人が広告をクリックして見ているかの詳細な効果データが出せなければ、ビジネスとしては成立しません。振り返ると古い感覚の広告モデルでしたね。 |
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ゲームについては、仕入れに大きなコストがかかりましたが、売上が伸びませんでした。いざウェブ上でゲームをすると、容量が重たいので途中で停止してしまうという問題があり、それをクリアできませんでした。 現在の広告ビジネスを見ると、ブロードバンドで配信されるショートシネマやミニシネマの前後や中に広告入れ込み、クライアントからの注文でシネマを作ったりもしています。マーケットからはお金を取らず、シネマを提供する側(クライアント)からお金をいただく形のビジネスモデルがかなりの割合で拡がっています。 |
一方、ゲームは容量が軽くなり、遊んでいる最中にゲームが止まることはありませんし、インターネットや携帯電話で遊べるゲームのニーズが増えているので、再挑戦が必要な状況にあると思っています。 |
◇現在の収益の柱は? | |
一番の収益の柱は、携帯電話向けのグラビアタレントのコンテンツです。アーティストのコンテンツは、収益性は高くはありませんが、ブランドとして大いに活用しています。セグメント別に見ると、携帯電話のコンテンツ配信が60%、ナローバンドが20%、ブロードバンドが20%の割合です。 |
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宮崎あおい デジタル写真集 | |
コア事業をコンテンツ事業に戻した当時は、ナローバンド、携帯電話でのコンテンツ配信がメインでしたが、現在はブロードバンド配信が利益の重要なウェイトを占めるようになってきています。ブロードバンドが普及した結果、通信インフラの価格競争は激化しましたが、コンテンツ提供側には速くて安い通信環境はメリットとなっています。それに伴い、コンテンツ配信のウェイトを携帯電話からブロードバンドへ、コンテンツは画像から映像へと移行しています。 今後、タレント、アーティストなどから、収益性の高いコンテンツに事業を拡大していく予定ですので、新年度は収益構成が変わると期待しています。特に大きいのは、「悲しき恋歌」の日本国内における「放映権」「DVD化権」「インターネット配信権」を獲得したことです。仕入れに多額の費用がかかりましたが、売上、利益ともに大幅な増加を見込んでいます。このようなビジネスの形は今後多くなっていくと考えています。 |
◇「悲しき恋歌」の放映が待ち遠しいですね。 | |||
4月30日から半年間(毎週土曜午後四時から)、フジテレビで放映されます。「悲しき恋歌」は、オールライツ・オールメディア(インターネット、放送などのメいろいろなメディアに使っても良い権利)で購入しました。「天国の階段」で主演を演じたグォン・サンウとヨン・ジョンフン競演のテレビドラマです。 |
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私も最初は仕事の必要性から、グォン・サンウが出演していた「天国の階段」を見ましたが、見ているうちに夢中になってしまいました。 放映に続いて、今年12月にはDVDを販売する予定です。DVDの売上が収益の大半といっても過言ではないので、「悲しき恋歌」がブレークするのを願っています。フジテレビの放映がDVDの大々的なプロモーションになると思っています。 嬉しいことに、すでにDVDには多数の予約申し込みがきています。またさらに、今年から来年にかけては韓流ではビックな企画を引き続き出せる予定ですので期待して下さい。 |
◇ナローバンドコンテンツから携帯電話用のコンテンツをつくる時には、同じものであってもシステムが違うので苦労なさったのではないですか? |
携帯電話はキャリアや機種が多様化しているため、システム構築は社外にお願いしていました。当社としては、共通のエンジン部分を少々加工するだけで次のコンテンツが容易にできるのだから、構築費用を安くして欲しいと思いましたが、システム会社としてはシステム会社の採算性が大切なわけで、システム構築にコストがかかったのが難点でした。 コストをかけても、商品のジャンルを増加させたことによる利点もあります。特にタレントコンテンツは、2次的な利用としてDVDやプリントメディアにも提供されています。今後は、システム会社や協力して制作を行える企業などとのアライアンスも構築していく予定です。 |
◇クリエイティブな仕事をする御社の従業員はどういった雰囲気ですか? | |
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一言で言うと「おたく」です。寝袋を持って仕事をする人もいるので、良い意味で自分でビジネスに責任を持っている「社内企業家」とも言えると思います。それが、社内の活力ともなっています。自由の中で発想し、自由の中で仕事をする人たちが集まっています。 |
◇齋藤会長にとってのエンタテイメントは? |
若い頃は、野球、テニス、ゴルフとスポーツもいろいろやりました。また今でもそうですが、仲間と飲みに行くのが楽しみの一つです。現在は、休日ゆっくりとリフレッシュすることに心掛けています。会社では日々の大きな変化の中にいます。それこそが私のエンタテイメントです。 幹部たちと意見交換をして、競争相手との関係、当社の実力の伸びを考えながら戦略を立てる、そのプロセスが自分を活性化させていると感じています。責任が伴う重い仕事ですが、全く苦になりません。 |
◇齋藤会長のこれからの夢はなんですか? | |
ビジネスの世界では、常に燃焼してきました。例えば、化学事業ではニュージーランドの天然ガスからメタノールを作り、日本に何十万トンも持ってきたり、デトロイトにプラスチックのコンパウンド工場を設立して自動車産業に供給したりするなど、数え上げればきりがないほど世界各国で様々な経験をしてきました。 |
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種々の産業分野で経験したことは次に生かせますので、これからは今までの経験を集約し、この会社で生かしていきたいと思っています。次の幹部を育成し、成長の中でも安定した状態にするのが当面の目標です。 |
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健康状態がベストでないと、気合が入った経営方針の舵取りができませんので、健康管理はしっかりと行っています。睡眠は最低9時間とり、9時以降は飲食をしない。飲食の量は昔の半分にしています。今までの人生のなかで、今が一番体調がいいですよ。 |
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◇これから起業する方や経営者へメッセージを。 |
私は若い経営者とよく交流を持っています。彼らは、自分から積極的に仕掛けて自分のポジションを確立しています。インターネット業界では、やれることはすぐ行動に移しますし、強い上昇志向を持っています。だからこそ、様々な面において活性化する。知恵もあるし、努力もかなりしていますよね。その上リスクを恐れない。そういう人たちは素晴らしいと思います。是非、頑張って素晴らしい人生を送ってもらいたいと思っています。 |
齋藤会長、貴重なお話をどうもありがとうございました。 |