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宇宙船の試作品(マウス用居住部=右の円筒=と、生命維持装置) |
日本のマウスが2週間の宇宙の旅へ――三菱重工業神戸造船所(神戸市兵庫区)が、回収型の生物実験衛星を開発中だ。国産の主力ロケットH2Aで08年度の打ち上げを目指す。「日本も独自に有人宇宙活動を」という宇宙航空研究開発機構の新長期ビジョンに向けた基礎研究の場になる。
H2Aの空きスペースに相乗りする生物実験衛星は、「カプセル型宇宙船」や太陽電池パネルで構成。宇宙船には直径約30センチの円筒の「居住部」と生命維持装置などが一体で収納されている。
マウスは6匹が乗り込み、宇宙で2週間暮らす予定。生命維持装置が新鮮な空気と水、餌を供給し、排泄(はいせつ)物は吸引式の装置で回収、二酸化炭素や便から出るメタンやアンモニアを処理する。
衛星は、H2Aで高さ数百キロ程度の軌道に乗せてもらう。健康状態を観察しながら、生命維持装置の妥当性や微小重力の影響を調べる。実験後はカプセルだけを大気圏に再突入させ、パラシュートで減速しながら海に着水させて回収する。
開発には総計で数十億円かかるとみられ、公的な研究費などの獲得が欠かせない。現状の設計図だと200キロ以上になる重量を半分以下にし、大気圏再突入や回収技術の確立という課題もある。
有人飛行を実現するには、動物による実験飛行が不可欠だ。神戸造船所は米スペースシャトル向けに、メダカやイモリなどの宇宙飼育装置を開発してきた。哺乳(ほにゅう)類の実績はないが、松本浩明・宇宙機器設計課長は「技術的に十分可能」とみる。