ニュース: 生活 RSS feed
関西の民放ラジオ12局が緊急地震速報 来年度内提供で合意
昨年10月スタートの「緊急地震速報」について、「ラジオを主に聞いている運転中のドライバーが、速報を受けてどう行動すればいいかなどの基準が十分示されず、認知度や信頼性も十分といえない」として導入を見合わせていた関西の民放ラジオ局12局が、平成20年度中の情報提供で合意したことが26日、分かった。ただし問題点は全く解決されておらず、不安をかかえたスタートになる可能性が大きそうだ。
協議していたのはABCやMBS、OBC、FM大阪、FM802など関西12局。関係者によると、各社間で導入時期がずれるものの20年度末には全社で情報提供を始める。ただしNHKが震度5弱以上の地震で速報を流すのとは異なり、「大きな被害を発生させる震度がどのくらいか、また発生頻度なども考慮」(関係者)し、震度5強以上で情報を流す方針。
民放ラジオ局側は導入に慎重で、先行する在京6局も今年4月開始。関西の12局も「ドライバーの認知度が低ければ、急ブレーキなどで『二次被害』も起こりかねない」(同)など不安の声が強く、10月の導入を見送って協議を進めてきた。しかし、阪神大震災が過去に発生し、東南海・南海地震への対策も必要とされる地区だけに、情報提供を開始することでは合意した。
ただし、環境整備はまだまだこれから。国(気象庁)がパンフレットなどで示す車の行動指針は「あわててブレーキをかけない」、「ハザードランプを点灯し、ゆっくり停止する」のみ。各ラジオ局の担当者からは「高速道やトンネルで本当に『ゆっくり停止』できるのか。早く逃げようと逆にスピードを上げるのでは…」と疑問の声があがったという。
また情報を流す主体となる局側が警察や消防、自治体と調整を行わなければならず、情報提供によって問題が生じた場合、局側がどれだけ責任を負わなければならないかなど、解決すべき問題点は多い。
「これまで都道府県が中心だった地域の防災計画の一躍を、急にテレビ局やラジオ局が担えるのか。システム整備にはコストもかかるだけに、気象庁は住民への認知度をもっと深め、基準を示してほしい」(同)という局側の願いは切実だ。
ラジオ局側のこうした不安に対し、気象庁地震火山部の斎藤誠・即時地震情報調整官は「われわれも周知に取り組んでいるが、情報提供だけでなく、周知の面でも報道機関の力が大きい。情報を伝えていただくようお願いしたい」としている。
緊急地震速報 地震の初期微動(P波)が、大きな揺れ(主要動、S波)より地中を伝わる速度が速いことを利用し、P波を地震計でとらえて自動計算し予想震度を発表する。昨年10月に放送などを通じた一般への提供を開始。同12月、大雨や洪水警報などと同様、NHKに放送義務がある気象業務法上の「警報」扱いとなった。技術的限界もあり、阪神大震災のような震源が内陸で深さが10キロ程度と浅い地震で、震源から25キロ以内は速報が間に合わない可能性が高い。