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トリアージ:重症者優先も軽症4割が病院搬送 東京消防庁

トリアージの運用状況
トリアージの運用状況

 救急隊が現場で搬送の必要性を見極める東京消防庁の「トリアージ」制度で、明らかに軽症と判断され自分で病院に行くことを勧められた患者の約4割が、実際には病院搬送されていたことが分かった。重症者の搬送を優先するために全国に先駆けて導入した制度だが、軽症者本人が「どうしても不安」「念のために」と強く依頼するケースが多いという。消防庁は「一つでも多くの命を救うために協力をお願いしたい」と呼びかけている。

 07年6月、都内の20代の男性から「おできができて痛みが引かない」と119番があった。駆けつけた救急隊員が事情を聴くと、お尻におできがあり、数日前から痛みがあると訴えた。救急隊は所定のチェックシートに基づき、血圧や脈拍など15項目を検査し「搬送に緊急性はない」と判断した。しかし男性が「痛みが引かないので搬送してもらえないでしょうか」と強く要望したため、結局、近くの病院に搬送した。

 消防庁によると、07年6月の制度開始から半年で、救急出動は約34万回あった。うち搬送不要と判断されたのは、軽微な交通事故など162件。そのうち38%の62件で、患者の同意が得られずに救急搬送したという。

 救急の担当者は「不安な気持ちや痛みは個人の主観で、外見から判断するのは難しい。患者側に『運んでほしい』と言われれば、トリアージに該当しても病院搬送せざるをえない」と打ち明ける。

 一方で、救急隊員の慎重姿勢もうかがえる。半年の実績を基に単純計算すると、搬送不要と判断される患者は1年で324人。年間5000件との当初の見通しを大幅に下回るペースだ。消防庁救急管理課は「実際にけが人と向き合うと救急隊員もより慎重に判断してしまうようだ」と、現場での判断の難しさを理由に挙げている。【古関俊樹】

 【救急搬送トリアージ】 救急隊が出動先で明らかに緊急性が低いと判断した場合、患者に自分で病院に行くことを勧める制度。出動件数が増え、119番から現場到着まで時間がかかるようになった対策として、東京消防庁が全国で初めて導入した。「選別」という意味のフランス語が語源。

毎日新聞 2008年1月26日 15時00分 (最終更新時間 1月26日 16時43分)

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