地域防災の要とされる、消防団員の減少が続いている。昨年は約89万2000人となり、90万人の大台を初めて割り込んだ。戦後の52年には約200万人を数えたが、過疎化や少子高齢化、産業・就労構造の変化などの影響を受けているらしい。
大地震や風水害などの際には、地元の事情に精通した消防団員の活躍いかんで住民の生死が左右されるとまでいわれるだけに、要員の確保は“災害列島”にとって喫緊の課題だ。
消防団は、消防署などの常備消防とは異なる市町村の非常備の消防機関。「自分たちの地域は自分たちで守る」という郷土愛護精神に基づき、全国のほぼすべての市町村に2474団が組織されている。団員は非常勤特別職の地方公務員で、住民のボランティア的な参加に頼っている。火災などに出動、消火や救出活動を行うのをはじめ、国民保護法制の施行で、有事の際は住民の避難誘導に当たる任務も帯びている。
減少が続くとはいえ、消防職員の約6倍に当たる要員動員力、管轄区域内に居住か勤務している地域密着性、教育と訓練を受けて災害に対応する技術、知識を身につけている即時対応力--が消防団の3大特性といわれ、地域防災の中核を担ってきた。
阪神大震災などの大規模災害では、がれきの下敷きになった被災者を救出したり、土砂崩れで埋まった道路の復旧に当たるなど目覚ましい成果を上げている。独居老人や寝たきりの病人などの情報にも通じているため、救助や避難誘導で手際の良い活動を展開できるのが強みでもある。
しかし、要員不足は過疎地だけでなく、都市部でも深刻になり、直下型地震などへの対応に不安が生じているのが実情だ。団員の高齢化も進み、40歳以上が約4割を占め、平均年齢は38歳に達している。また、比較的活動しやすい自営業の団員が減り、約7割を被雇用者が占めるなど訓練などに支障も生じ始めている。
かつては勧誘の必要はなかったというが、東京消防庁は今月、全国で初めて団員募集の街頭キャンペーンに乗り出した。総務省消防庁も事態を重視、負担軽減のため消防団活動のすべてではなく大規模災害だけに出動したり、特定の災害活動や行事に参加する「機能別団員」の募集や養成を促進する一方、女性だけの分団作りなども進めている。
消防本部などは広報活動に力を入れ、窮状を市民に訴えて入団を呼びかけることが何よりも大切だ。事業所単位の分団の編成を促したり、大学などにも協力を要請して若い団員の確保に努めるなど地域の特性に応じた取り組みも求められる。
消防団の減少をよそに増加している防犯ボランティア団体との連携なども模索して、地域の備えを早急に固めたいものだ。
毎日新聞 2008年1月26日 0時14分