東宝がこの6月に公開を予定していたベストセラー小説の映画化作品『ホームレス中学生』が、今秋公開に変更されることがわかった。東宝によると、製作スケジュールの都合という。実際のところ、監督、俳優がいまだ決まらない状態で、さらに肝心要の脚本も完成していないこともあり、やむをえない措置だったとみえる。
田村裕「ホームレス中学生」の写真
公開のローテーションをしっかり守ることで定評のある東宝だけに、今回のようなケースは珍しい。それだけ料理するのが大変な原作の映画化とも言える。関係者によると、原作には実に感動的な場面があり、脚本化、映画化にあたって、そうした中身をしっかり伝えていくことが重要と判断したという。準備が完全にできていない段階で、早急に撮影に入ることのデメリット部分を、極力避けたとも考えられる。
映画は企画によって、速効性を求められるケースがある。中身の鮮度が落ちないうちに完成させてすぐに公開する。こうした製作方式がもっともうまくいった例は、最近では『電車男』だろう。ネットからうまれた企画だけに、その旬な話題が冷めないうちに、企画から公開までもっていくことが成功のカギとなった。
『ホームレス中学生』はある意味、『電車男』的な製作姿勢とは対極にあると言っていいかもしれない。秋公開ということで、年末の賞レースを視野に入れている可能性もある。一昨年の秋に公開され、その年の賞を総なめにした『フラガール』を思い起こさせる。とにかく、今回の公開変更でも、番組編成的にほとんど支障をきたさないというところが、いかにも東宝らしい。
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