医師不足や経営悪化に直面する公立病院のあり方をテーマにした講演会が26日、岡谷市長地権現町の諏訪湖ハイツで開かれた。全国各地で公立病院の経営改革を手掛ける公認会計士の長隆(おさ・たかし)さんが公立病院経営の現状と課題を説明。一般病床300床の新病院を約110億円で建設する岡谷市の計画について「莫大な負の遺産を後世に残す可能性がある。大幅に縮小すべき」と警鐘を鳴らした。
講演会は、岡谷市のより良い市民病院建設を推進しようと市民有志が同日立ち上げた「新生岡谷病院建設を考える市民の会」(飯森勝代表)の主催。病院経営に理解を深めるため、総務省の公立病院改革懇談会座長を務める長さんを講師に招いた。医師や市職員、市民約150人が集まった。
長さんは、国の財政健全化法に触れて「岡谷市の実質収支は赤字ではないが、これからは病院会計を連結して考えなければならない。全国の公立病院の約八割は累積赤字を抱えている」と紹介。累積赤字の背景に、高い給与費比率やコスト削減の遅れがあることを指摘した。
「給与費改革は本庁から言い出しずらく馴れ合いの関係がある。自治体本庁職員の給与費も改革すべきだ。給与費に手をつけずに中身のない経営改革プランを作って仕方がない」と強調。自ら策定に携わった総務省公立病院改革ガイドラインに基づく数値目標が達成できない場合は「病院をやめて診療所にしてもらう。総務省は本気でやる」と断言した。
市立岡谷病院と岡谷塩嶺病院を統合して、新病院を建設する岡谷市の計画に対しては「一床当たり約4000万円の建設費は民間の倍以上の予算。経費を含めても相当高い。多くて200床、150床あれば十分」とし、「箱を作れば医者が来るというのは幻想。医者が来ないのは病院に魅力がなく、行政が改革にお金を使う勇気がないから」と話した。
さらに、両病院に医師を派遣する大学が違うことに言及し、「文化の違いを一本化するのは難しい。両病院が対等に病院の役割を協議すべき」と強調。病院のあり方を第三者が検討する委員会の設置も促した。「役所主導ではだめ。病院の役割は現場でやっている人たちの総意で決め、議会や市が追認する形が好ましい」とし、国が進める公立病院改革の厳しさを訴えていた。