ここから本文エリア あれから ’07回顧
<3> 性別表記 発想転換を2007年12月22日
∞6月 保険証に「女」ダメですか∞ 心と体の性別が一致しない性同一性障害(GID)と診断され、戸籍上は男性だが女性として日常生活を送っている松江市の上田地優(ち・ひろ)さん(49)が先月、市に国民健康保険証の性別欄の記載を「女」とするよう求めた。市はいったん希望を受け入れる姿勢を伝えたが、その後撤回し、12日に「認められない」と回答した。実現すれば全国初のケースだったが、「保険証と戸籍の性別表記は一致させるべきだ」との厚生労働省の見解に市が折れた形だ。(6月15日付島根・石見版から抜粋) 上田さんは11月15日、松江市の処分を不服として、県国民健康保険審査会に審査請求した。年の瀬を迎えた今、性別表記問題が再燃している。 ◇ ◇ 「市長の政治判断が求められている」 今月10日の市議会本会議の代表質問で、津森良治市議はこの問題を取り上げた。 松浦正敬市長は「戸籍上の性別を記載すべきだ、という厚生労働省の見解と異なる対応はできないと判断した」と答弁。これまで通りの説明をしたうえで、こう続けた。「これでいいとは思っていない。(保険証への性別の記載を義務づけている)法律を改正できないか、厚生労働省の見解を聞きたい」 ◇ ◇ 国民健康保険証の性別表記は、戸籍と連動している。上田さんの保険証は「男」。だが、その保険証と、自分を女性ととらえている気持ちや容姿にはギャップがあり、使いづらい。国保を運営する松江市に「女」と記載するよう頼んだのは、こうした理由からだ。 市内の医療機関のなかには、上田さんの書類に「女」と記載し、戸籍の性別との「ねじれ」を乗り越えようとする動きも現れている。 昨年1月、性同一性障害と診断した市立病院。翌月、上田さんの希望を受け入れ、「女」と記載した診察券を発行した。併せて、カルテや医療費の計算システムなども「女」と登録した。 今年11月、市立病院に県国民健康保険団体連合会からある知らせが届いた。市立病院が市に医療費を請求する際、明細書をチェックする同連合会。市立病院が電子データで送った上田さんの明細書が、連合会の持つ「男」の情報と合わず、機械にエラー表示が出たとの内容だった。 市立病院は対応を協議。エラーを防ごうと、今月から性別欄を空欄にした紙の明細書を送る方法をとることにした。事務担当者は「主治医の判断を仰ぎ、上田さんを女性として受け入れている。一時的であっても男性と登録されるのは、上田さんも不本意ではないでしょうか」と、心情をおもんぱかる。 ◇ ◇ GIDをめぐる法律問題に詳しい大島俊之・九州国際大法学部教授(民法)は「ほかの自治体でも上田さんと同じ問題が起きている。当事者の生活を第一に考えて、行政の発想を乗り越える首長がいたら解決するのだが……」と言う。 審査会の初会合は25日に開かれる。(上原賢子) マイタウン島根
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