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法政大学経済学部同窓会同窓会特別講座>村串仁三郎教授
同窓会特別講座

日本人のゴルフの遊び方
村串仁三郎 教授
 かつて30年前から「労働経済論」を講義してきました村串です。卒業生のみなさん如何お過ごしでしょうか。この度、経済学部同窓会のホームページでの簡単な講義をおこなうことになりました。かつてもっぱら労働について研究し、講義してきた私ですが、ここ数年レジャーについて研究し、時々講義しています。
 今回は、私が2年ほど前に発表した「日本人のゴルフの遊び方」について講義したいと思います。この論文は、村串・安江編『現代社会とレジャー』、法政大学出版会、1999年3月、に出版した本に掲載されています。

 ゴルフといえば、その是非、好悪がすぐ分かれてしまうかもしれません。ゴルフ好きが多い一方、ゴルフ嫌いも少なくありません。私は、かつて15年前にイギリスに留学していた折に、毎週1回程度2年ほどゴルフを楽しんだことがあります。私も、ゴルフをやる以前は、ゴルフは贅沢で貴族的で、気取っていて嫌いでした。特に大の男がか弱き女性に重いゴルフクラブを担がせてプレイするなどというスポーツは、むしろ嫌悪していました。
 ところが、イギリスでは、ゴルフは、決してそうしたものではなく、貧乏人や子供たち、失業者や年金生活者が、安い料金で、しかしキャディーなどつけずに、自分でカートをひいて、楽しんでいました。(こうした事情については、10年前に「イギリス人庶民のゴルフライフ体験記」、『労働レーダー』1990年3月−11月号連載、というエッセーで書きました。ご参考までに。)
 イギリスから帰って、私は、従来働く人たちの労働問題ばから研究してきたことを反省して、働くだけでなく日本人もしっかり人間らしく遊ばなければならないと実感しました。そこで日本人はどんなレジャーを楽しんでいるかに関心をもつようになりました。ゴルフについても、日本人はゴルフをどのように楽しんでいるのか、知りたくなりました。自分も日本でゴルフをやってみました。日本のゴルフについて、調べてみました。ところが、日本人のゴルフには、欧米では考えられない多くの問題点があることを発見し、かつ驚かされました。

 まず日本のゴルフの問題点は、グリーン・フィーがとても高いことです。欧米の5倍、時には10倍といった高さです。では何故、日本のゴルフのプレー代が高いのか。まず考えられるのは、日本の国土は、平地が少なく土地の価格が高いことが上げられる。またそれ故に、ゴルフ場開発が山里に進出し、森を切り開き、山を削り谷をうめるため、造成費がかさむためです。公害にからむ莫大な補償費や公害をさける特別手当ての支出も一因でしょう。
 しかしそれだけでは、日本のゴルフ・プレー・コスト高を説明しきれません。もう一つの重要な要因は、ゴルフ需要の異常な高さです。それが、ゴルフ・フィーを異常に吊り上げることになったと思われます。しかしでは、何故日本では、異常なほどゴルフ需要が大きいのかです。
 その理由は、いくつか考えられます。第1に考えられることは、日本では預託金ゴルフ会員権制度というものがあって、本来ゴルフ場開発費が著しくかさむのを、相対的に安価に開発することを可能にし、ゴルフの異常な大衆化を生み出したことです。預託金ゴルフ会員権とは、すでにご承知のように、会員権を発行して販売し、無利子、無税で金融機関以外の一般から資金を集め、それで自由にゴルフ場の開発を可能にしたものです。
 第2に、この預託金ゴルフ会員権を、大衆および企業の投資の対象となり、ゴルフをスポーツと利殖の「うまみ」のある遊びにしました。大衆は、遊びと利殖をめざしてゴルフ会員権を買い求めた。特に企業や小金持ちは、利殖をめざして会員権を買いあさりました。
 第3に、日本の経営文化を反映して、ゴルフを交際費で顧客を接待するというビジネス手段にしたことでしょう。これが、日本のゴルフを普及させた大きな原因となっただけでなく、個人の腹の痛まないため、ゴルフ開発を極端におしすすめ、かつ高価にして贅沢ななゴルフを生み出したのです。
 第4に、かつて贅沢で高級なスポーツであったゴルフに、日本の勤労大衆がステイタス・シンボルとして飛びついたことも、大いに原因していると言えましょう。

 いずれにしろ、日本ではゴルフが盛んで、特にバブル期は、サラリーマンの中で、ビジネスと個人の遊びをかねたスポーツとして、ことのほか盛況をきわめました。平成大不況の中で、預託金制ゴルフ会員権のいい加減さが暴露されて、ゴルフ場の乱開発もなくなり、いささか民衆のゴルフ熱も冷めています。これからが、本当に真のスポーツとしてのゴルフがどうあるべきかが問われることになるでしょう。もっと詳しい話に興味のある方は、ぜひ拙稿をお読み下さい。
(2003.4.1)

村串仁三郎教授 筆者:村串 仁三郎(むらくし にさぶろう)

法政大学経済学部教授
昭和10年生まれ。法政大学社会学部卒
同経済学部大学院博士課程終了
同経済学部助教授を経て現職。同学部長等を歴任
専門は「労働経済」特に「鉱山労働史」、「現代レジャー論」「観光学」
主な著書は
『レジャーと現代社会 −意識・行動・産業』 法政大学出版局 1999年
『日本の鉱夫 友子制度の歴史』 世界書院 1998年
『日本の伝統的労資関係 友子制度史の研究』 世界書院 1989年
『賃労働政策の理論と歴史』 世界書院 1980年 他多数