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緊急地震速報、震度5弱で流れず 予測「4」は基準以下

2008年01月26日13時52分

 26日午前4時33分ごろ、石川県能登地方を震源とする地震があった。昨年3月の能登半島地震で被害が大きかった同県輪島市門前町で震度5弱を観測するなど、気象庁が昨年10月から始めた緊急地震速報の対象だったが、予測が基準を下回っていたため速報は流れなかった。内陸の直下地震では時間的に間に合わない技術的な限界も示しており、同庁は「さらに精度の向上に努める」と、次の地震に備える。

 気象庁は、震度5弱以上の揺れが予測された場合に速報を出すことにしている。震度5弱は「窓ガラスが割れて落ちることがあり、電柱が揺れるのがわかる」などと説明される。大きな揺れが来る前に知らせることで、身の安全を守ってもらう、世界にも例のないシステムだ。

 今回の地震では、初期微動を感知してから5秒後に「マグニチュード(M)4.4、最大震度3」と予測。さらに2秒後、「M5.0、震度4」と修正した。いずれも発表基準には達しなかった。

 しかし、実際の地震はM4.8で、輪島市門前町で震度5弱を観測した。

 「残念ながら速報は発表されていません」。地震発生から2時間後、気象庁で会見した上垣内(かみがいち)修・地震情報企画官には悔しさがにじんだ。「震源やマグニチュードはほぼ正確だった。誤差の範囲だった」と説明した。

 阪神大震災以降、気象庁は震度計の整備を全国に広げ、計測震度で各地の揺れがすぐにわかるようにした。その計測震度は今回、「4.5」だった。震度5弱の最低ラインだった。「精度はよかったのに、ほんのわずかな差で速報に結びつかなかった」。速報が導入されて3カ月。緊急参集した職員は、初めての速報の機会を生かせなかったことを残念がった。

 ただ、今回、仮に速報を出したとしても初期微動から5秒後で、能登半島では強い揺れが来る前に速報が出ることはなかった。震源が10キロ程度と浅い所では間に合わないシステムの限界も見せつけた。

 緊急地震速報の検討会委員を務めた日本大学の中森広道准教授(災害情報)は「5弱だと局地的に出る場合もある。速報が出ても間に合わない場合もある。今回のように寝ている時間であれば情報は生かせない。あまり万能だと思わず、家具の固定など地震対策をしてほしい」と話す。

 緊急地震速報をめぐっては、今月13日、北海道の震度4の地震で、NHKが誤って緊急地震速報を流したばかりだった。

 今回の震度は、輪島市門前町で5弱、穴水町で震度4だった。北陸や東海地方でも体に感じる揺れがあった。震源の深さは11キロだった。総務省消防庁によると、人的被害などは出ていない。

 気象庁は、震度6強を観測した昨年3月25日の能登半島地震(M6.9)の余震とみている。昨年3月の地震の約20キロ北北東で、断層が西北西と東南東方向から押し合ってずれる逆断層型だった。能登半島地震の余震で震度5弱以上の揺れが観測されたのは、昨年3月28日の地震(M4.9)以来。

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 〈緊急地震速報〉 地震で最初に届く小さな揺れ(P波、秒速約7キロ)をとらえ、その後に来る大きな揺れ(S波、同約4キロ)を予測するシステム。気象庁は昨年10月から、最大震度5弱以上の揺れが予測された場合に速報を発表することにしている。気象業務法が改正され、警報として扱われるため、指定公共機関のNHKは速報を流すことが義務づけられている。民放テレビ局は義務はないが、放送する。主な在京ラジオ局は今年4月から、震度5強以上が想定された場合に放送する予定。

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