中医協、前橋で公聴会を開催

 2008年度診療報酬改定の骨子について国民の意見を聴くため、中央社会保険医療協議会(中医協、会長=土田武史・早稲田大商学部教授)は1月25日、群馬県の前橋市民文化会館で公聴会を開催した。一般公募33人の中から選ばれた開業医や看護師、薬害患者など10人が中医協委員の前で意見を発表。「診療所の再診料の引き下げは厳しすぎる」、「7対1入院基本料への看護必要度の導入はやめてほしい」、「明細書の発行を無料にすることが薬害根絶の第一歩」――など、次期診療報酬改定に向けた意見をそれぞれの立場から述べた。会場には報道関係者のほか多くの一般傍聴者が詰め掛け、熱心に耳を傾けていた。

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 最初に壇上に立った前橋市内の内科医は勤務医の待遇改善について述べた。
 
 「1人辞めると残りの医師にしわ寄せがくるが、辞めた医師の給料を残りの者で分けるわけではないので、同じ給料のまま苦しみ、疲労でリスクも高くなる」と勤務医の状況を語り、「根本的に改善すべき」と訴えた。

 また、伊勢崎市内の病院で副院長を務める医師は夜間の当直帯に脳卒中などの専門医が常駐することの難しさなどを語り、「勤務医の疲労は極限に近い」と声を強めた。

 一方、千葉市内の歯科医は「前回の診療報酬改定が歯科診療所の経営の安定を揺るがしている」として、歯科の総合診療料の見直しなどを求めた。

 群馬県内の薬剤師は後発医薬品の使用促進に理解を示しながらも、「在庫を増やすためのスペースが足りない。機能の拡張には限界がある」と述べ、後発医薬品の使用促進に取り組めない薬局があることを指摘。「後発品の使用促進は財政的な側面に偏り、現場への配慮が足りない」と注文を付けた。

 東京都内の看護師は「7対1入院基本料への看護必要度の導入は絶対にやめてほしい」と要望。看護必要度の導入により患者の病態を評価する作業が増え、労働環境の悪化や患者の安全に不安が生じることなどを指摘し、「離職防止こそが最も有用な対策だ」と訴えた。
 看護師はまた、「TNS(Toranomon Nursing System)という看護必要度で有名な病院は毎年約200人の採用がありながら、7対1がまだ取れていない。それは離職に歯止めがかからないからだ。急性期の大病院は厳しい労働条件のため離職者が多い」と深刻な看護師不足の現状を語った。

 また、薬害肝炎の被害者である神奈川県内の女性は、患者に対する医療情報の提供について意見を述べた。女性は「スーパーの客はレシートを細かくチェックしている。ところが、病院ではどんな製剤が投与されたかを知ることができない。薬害訴訟の原告団に加わるには投薬証明が必要だが、カルテが病院に残っていないため原告団に加われない患者も多い」と声を強めると、会場が静まり返った。
 女性は「レセプト並みに個別の診療単価を確認できる明細書を無料で発行することを公的に義務付けてほしい」と強く求めた。

 このほか、がん患者のためのNPO団体を運営している男性や健康保険組合に勤務する男性、医療事務の男性などが意見を述べた。
 10人の意見発表を終えて、土田会長は「生の声を聴くのはいいものだ。頂いた意見はパブリックコメントと合わせて中医協で議論する。必ず参考にして今後の議論を進めたい」と締めくくった。
 今後、中医協はこの日の意見などを踏まえて再度審議し、2月中旬の答申を目指す。


更新:2008/01/26   キャリアブレイン

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