2008年度の診療報酬改定に向けた審議で、支払側と診療側の溝が埋まらない診療所の再診料などの問題を決着させるため、中央社会保険医療協議会(中医協、会長=土田武史・早稲田大商学部教授)は1月25日、前橋市内で総会を開いた。次期診療報酬改定の緊急課題である病院勤務医の負担軽減のために「互いに痛みを分かち合う」という点で、日本医師会は前回よりも歩み寄りを見せたが、最終的な結論は出なかった。次回の総会で、勤務医の負担軽減策にかかる費用などを厚生労働省が示した上で議論し、中立的な立場にある公益委員が最終判断を下す。
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中医協、公聴会後に総会を開催
診療所の再診料引き下げ、また紛糾
中医協、08年改定の骨子案を了承 この日、中医協は診療報酬改定について国民から意見を聴く「公聴会」終了後、支払側と診療側の間で争点となっている項目について最終的に合意するために総会を開いた。
議論したのは、▽診療所の再診料引き下げ、▽外来管理加算(5分以上の説明要件)、▽デジタル映像化処理加算の廃止――の3点。
支払側は、診療所の再診料の引き下げなどによって財源をひねり出して病院勤務医の負担軽減に充てるべきことを改めて強調。一方、診療側の日本医師会は勤務医の負担軽減のために最大限の努力を尽くしていることを強調した。
診療側を代表して意見を述べた鈴木満委員(日本医師会常任理事)は冒頭で、「勤務医の疲弊は十分認識している。限られた財源を勤務医対策に重点的に配分するよう重ねてお願いする」と述べた。
その上で、鈴木委員は「診療報酬本体のプラス改定による財源や、軽微な処置の包括化による財源など、これらはすべて勤務医対策に充てていただきたい」と述べ、次期改定によって診療所も痛みを受けることを強調した。
しかし、病院と診療所は医療の内容が違うことなどを理由に「再診料の引き下げなどは、とうてい同意できない」と引かなかった。「診療所から病院にこれ以上財源を委譲することは地域医療を崩壊させる。開業医のモチベーションを下げる」と反対した。
診療側の渡辺三雄委員(日本歯科医師会常務理事)と山本信夫委員(日本薬剤師会副会長)も鈴木委員に同調した。山本委員は「再診料は私たちの調剤基本料に当たる部分で基本給のようなもの。経営を安定化させる収入だ」と援護した。
これに対して、支払側の丸山誠委員(日経連医療改革部会長代理)は「国民の納得を得られるかという観点で議論を整理すべきだ。財源について内部の細かいやりくりは国民には分からない。しかし、病院と診療所の再診料が違っていることは分かる」と指摘。「再診料が(診療所よりも)安い病院に患者を行かせてしまっている」として、病院の入院機能と診療所の外来機能の役割分担を進める必要性を訴えた。
再診料の引き下げをめぐる審議は、外来管理加算の要件見直しやデジタル映像化処理加算の廃止とともにまとまらず、支払側の対馬忠明委員(健康保険組合連合会専務理事)の提案で、公益委員が最終判断を下すことに決まった。
土田会長は公益委員の判断資料として、厚労省に勤務医対策の予算などを具体的に提示することを要請。「勤務医対策はどれぐらいの財源があればできるのか、どれぐらいの財源を診療所から病院に移転する必要があるのか、メリットやデメリットを勘案しながら判断したい」と求め、最終的な結論は持ち越された。
次回、勤務医対策にかかる費用や具体的な対策の内容などを踏まえて議論し、公益委員が最終的な判断を下す。
更新:2008/01/26 キャリアブレイン
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医師の山田規畝子さんは、脳卒中に伴う高次脳機能障害により外科医としての道を絶たれました。しかし医師として[自分にしかできない仕事]も見えてきたようです。