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【編集局デスク】

「品格」ばやり

2008年1月26日

 どの書店も「品格」と題した本がズラリと並んでいる。「品格」ばやりである。

 一昨年にベストセラーとなり、ブームに火を付けた藤原正彦さんの『国家の品格』。昨年これに続いた坂東真理子さんの『女性の品格』。さらには坂東さんの次作『親の品格』や、『男の品格』『会社の品格』『横綱の品格』…といった具合だ。

 何やら便乗のにおいもするけれど、やはりこれほど売れているのは、多くの人が品格を求めている、裏返して言えば、今の日本の社会や日本人には品格が欠けていると強く感じているからだろう。

 では、品格とは何か。

 広辞苑には「品位。気品」とあるだけで、そっけない。新明解国語辞典は「(1)節操の堅さ見識の高さや、態度のりっぱさ姿の美しさなどから総合的に判断される、すぐれた人間性(2)品のよさ」と、説明は長いが要領を得ない。

 極めて私流に定義させてもらうなら、品格とは何より、欲を自分で抑えられることである。人間誰しもお金は欲しいし、出世もしたい。だが、そうした欲を身の丈に合ったレベルに制御する。これが品格の根幹だと思う。

 もう一つ付け加えるなら、ずるいことをしないことである。人が見ていようが、見てなかろうが、振る舞いを変えず、うそをつかない。

 欲望を抑制する節度と、正々堂々の精神。ここから品格は、自然とにじみ出てくるのではなかろうか。

 それにしても、品格ゼロの事件が後を絶たない。

 有力な製紙会社こぞっての再生紙偽装。年賀はがきからコピー用紙まで、古紙の配合率を偽り続けてきた。自分たちの利益しか考えない欲と、ばれなければいいという姑息(こそく)な精神のなせる業だ。

 そして、NHK記者たちのインサイダー取引。こともあろうに同僚の特ダネをこっそり頂き、株でひともうけした。報道という重い使命を卑しい欲望で汚し、ジャーナリストの風上にも置けない。NHKの病巣は深い。

 「品格」本が読まれなくてすむ時代がやって来るのは、まだまだ遠い先のことなのだろうか。

  (名古屋本社編集局長・加藤 幹敏)

 

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