折り紙飛行機を宇宙から帰還させる。福山市の日本折り紙ヒコーキ協会会長・戸田拓夫さんが大きな夢に挑んでいる。
先日、千葉県内で大気圏突入時の高温に耐えられるかを調べる風洞実験が行われた。耐熱性の紙で作られた全長約八センチの米スペースシャトルに似た機体は、マッハ7の気流の中で発火も破損もなく成功した。
戸田さんが本格的に折り紙飛行機を始めたのは病気療養中の大学二年の時だった。退屈しのぎと子ども時代の懐かしさからだが、一枚の紙が創意工夫でいろんな形になり空を飛ぶ魅力のとりこになった。考案は数百種類に及ぶ。
「折り紙飛行機は生涯のテーマ」という。究極が宇宙からの帰還計画だ。国際宇宙ステーションから放出し、宇宙を飛び地球に無事帰ってこさせる。実現に向け、壁に突き当たるたびに折り紙飛行機を通して交流を深めた専門家たちの助けを受け進めてきた。
著書「折り紙ヒコーキ進化論」で戸田さんは、将来の日本に必要なのは「子どもの頃に培った雑草のような強さ、借り物でない個性や技を持った人間」と強調する。そんな子どもが育つ土壌づくりが大人の使命だとも。
岡山県子ども会連合会が小学高学年を対象にした調査で五割超が「夢はない」と答えたそうだ。壮大な目標に挑み続ける大人の情熱を見せれば、子どもたちの心に夢はしっかりとはぐくまれよう。