校長室の机の上に置かれた電話に全員が集中する。校長先生と詰め掛けた報道陣。ベルが鳴るのを、今か今かと待つ。あの緊張に包まれた取材経験が忘れられない。
選抜高校野球大会の出場校には日本高野連から出場決定の連絡が電話で伝えられる。待ちに待った吉報だけに、野球部員や学校関係者は喜びを爆発させる。夏の地区大会を勝ち抜いてつかんだ甲子園切符とは異なる春のセンバツならではのうれしさであろう。
昨日は岡山・興譲館の校長室の電話が鳴った。センバツ出場が決定した。興譲館は、昨秋の中国高校野球大会で四強に食い込んだ。だが、一般選考の中国地区枠は三しかない。関係者は電話が掛かってくるまで気が気ではなかったはずだ。
実力は申し分ない。昨秋の岡山県大会で初優勝し、中国大会へ三十八年ぶりの出場を果たした。準決勝で優勝した山口・下関商に屈したものの、惜敗だった。堅守と粘り強い戦いぶり、そして全力疾走など高校生らしいひたむきなプレーが光った。
甲子園出場は春、夏通じて初めて。学校は江戸時代から続き、今年開学百五十五年、野球部は創部六十年である。節目の年の朗報に地元の井原市民はもちろん、県民の関心は高まり、応援も盛り上がろう。
興譲館といえば、京都・都大路を走る高校駅伝女子の活躍で全国に名をとどろかす。今度は野球部の出番だ。