「おてがみをひろったかたは、おへんじをください」。千葉県銚子市の銚子漁港で水揚げされたカレイの背中に、川崎市の市立宮崎小(菊池俊光校長)が93年に創立120周年を祝って上げた風船と手紙がついていた。15年を経て約100キロ東の太平洋の海底から回収された手紙。書いた本人の川崎市宮前区、早稲田大2年、白髭(しらひげ)奈津実さん(21)は「こんなすてきな話があるなんて」と喜んだ。
手紙と風船が付いていたのは、犬吠埼(銚子市)の南東約40キロ沖で操業した底引き網漁船「第8大徳丸」(65トン)が24日に水揚げしたカレイ。船主の君野喜好さん(52)が3.6トン分の魚を仕分けている際中に、1匹(体長約50センチ)の背中に四つ折りの紙がべったりと張り付いているのを見付けた。広げたところ「わたしは1ねんせいです。いま、わたしのがっこうは百二十さいです」と、黒いたどたどしい字で書かれた文章が見えたという。
銚子市漁協が宮崎小に問い合わせたところ、93年11月27日の創立120周年記念式典で白髭さんが風船で飛ばした手紙とわかった。白髭さんは当時1年生。全校生徒で風船を上げ、「花の種も付けたような記憶がある」という。「風船が青空に小さくなっていく光景を今でも覚えている。ごみと間違えられず、ちゃんと読んでいただいて、すごい縁を感じる」と話した。
手紙の紙質は耐久性のある油紙。油性ペンで書いたため、長期間海水につかっても読めたらしい。どこに落ち、どんな海流に乗って銚子沖にたどりついたのかは分からない。
漁場は水深1000メートル付近といい、君野さんらベテラン漁師たちも「15年たってカレイの背中に張り付いて現れるとは」と不思議そうに話した。【新沼章、笈田直樹】
◇手紙の全文
おてがみをひろった人へ
わたしは小がっこう1ねんせいです。いまわたしたちのがっこうは、百二十さいです。そのおいわいで、みやしょうおんどをうたったりおどったりします。このおてがみをひろったかたは、おへんじをください。
しらひげなつみ
川崎市宮前区馬絹1795
川崎市立宮崎小学校
毎日新聞 2008年1月24日 19時43分 (最終更新時間 1月25日 7時54分)