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福山市民病院、人材確保に躍起 '08/1/24

 ▽医師や看護師の給与増、保育施設も新たに設置

 福山市は、市民病院(蔵王町)で働く医師、看護師の給与アップや院内保育施設の新設など、勤務者の待遇改善を進めている。医療制度改革などの影響で地方病院の医療従事者が全国的に不足する中、労働条件を充実させ、人材を確保する狙いがある。

 給与面で市は本年度から、嘱託、研修医を除く全医師を対象に地域手当の支給を始めた。月給約10%分の上乗せで、一人当たりの手取りは平均で月五万円強上がった計算になる。救急患者などに対応した際の特殊勤務手当も、上限を撤廃した。

 看護師と助産師については新年度から、月給に上積む初任給調整手当を設ける。新採用者と免許を取得して五年以内の現職が対象で、月額二万八千円を上限に支給する。

 医師や看護師は近年、研修や人員配置の医療制度変更で、人材が大都市圏の大病院などに流れたため、地方病院の勤務者が慢性的に不足している。特に産科や小児科などの科目で顕著で、市民病院の産科部門も岡山大の医師引き揚げで昨年四月から休診している。

 こうした医療状況の中で人材を囲い込み、新規採用をしやすくするため、医師、看護師の給与増に踏み切った。手当の支給により、給与は近隣にある国、県立の医療機関とほぼ同水準になるという。

 さらに市は新年度、医師や看護師、職員が勤務中に乳幼児を預けることができる保育所を院内に設ける。仕事と育児が両立しやすい環境づくりが目的で現在、病院敷地内に延べ床面積約二百平方メートルの平屋施設を建設している。夜勤者向けに週二回前後、二十四時間運営もする予定でいる。

 保育施設の建設費は約五千万円。医師、看護師の給与増などと合わせると労働条件整備に対する支出は大きいが、市議会にも広島県東部の基幹病院としての機能維持を求める声が強く、批判はほとんどない。

 市民病院事務部は「医療サービスの質を確保するため、今後も働きやすい職場づくりに努める」としている。

 都市間競争に勝つ上でも、市民の安心に直結する医療体制の整備の重要度は増すばかりだ。広島国際大医療経営学科の佐能孝教授(医療情報学)は「人材確保には労働条件の充実も大切だが、新しい医療技術を積極的に採用したり、若手医師の育成システムを整備したりするなど、働き手のやりがいを保つ制度づくりがより重要になる」と指摘している。(野崎建一郎)

【写真説明】医療従事者の子育て支援のため建設中の院内保育施設




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