子どもが産めなくなっていく!

 産科の医師不足が深刻化し、出産できる病院・診療所の数が年を追って減少している。日本の分娩施設数について、厚生労働省は2005年時点で全国に約6,000か所と発表していたものの、実際には約3,000か所に過ぎないことが開会中の国会でも取り上げられた。身近な地域に分娩施設がなく、救急搬送中の車内等で出産するという事例も報告されるなど、地方を中心に各地でお産難民≠ェ急増しているという。少子化対策が国の重要な課題となっている中、産科の正確な実態把握はもとより、国が産科医療の提供体制を早急に整備することが求められている。

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 厚生労働省は3年に1度の割合で「医療施設(静態・動態)調査・病院報告の概況」を発表。それによると、産婦人科・産科を標榜する病院・診療所は、96年に7,302、99年に6,829、02年に6,398、05年に5,997と、調査をする度に施設数が減少していた。このうち、実際に分娩を実施した施設数でも、96年が3,991(54.7%)、99年が3,697(54.1%)、02年が3,306(51.7%)、05年が2,933(48.9%)というように段々と少なくなっている。

 一方で、厚労省が公表している数値は現実を正しく反映していないなどと、日本産科婦人科学会が詳細な全国調査を実施。その結果、分娩を取り扱う施設は、05年時点として同省が示している約6,000の半分強の3,063に止まっていることが分かった。同学会・学会のあり方検討委員会などの調査の結果では、93年からの約13年間で約3割も減少。同学会によると、この間の出生数の減少率は12%で、分娩施設の減少の方が迅速になっている。

 同学会の「分娩施設における医療水準の保持・向上のための緊急提言」では、分娩施設減少の原因として、診療所では、診療所医師の高齢化▽訴訟圧力の増大▽医療水準維持のための経費増大と、これに応じた分娩料適正化が遅れていることによる経営難−などがあると指摘。病院では、医師の労働量の増加▽04年に導入された臨床研修の必修化に伴う新規専攻医師の2年間にわたる不在。その結果として産婦人科医師の減員。勤務の過酷化▽低水準の給与▽中堅医師の退職・転職の増加−などを挙げている。

 開会中の通常国会では、1月23日の代表質問で市田忠義・参議院議員(共産党)が「出産できる病院・診療所は2006年までの5年間で6,398か所から3,063か所に激減している」などと質問。医療崩壊≠引き起こしている深刻な医師不足を解決するために、医師増員に踏み出すことを福田康夫首相にただした。
 産科をめぐっては、「産科が相次いで閉院し、市外まで行かなければ出産できない」、「50キロ離れた産科病院に救急車で搬送中に、車中で出産した」などという事態が各地から報告されている。

 神奈川県産婦人科医会は、現状のまま推移すると、2022年には同県内で扱える分娩件数が4700件以上も減ると推測。これによって、県内の3分の1に当たる妊婦が影響を受けると見ている。日本産婦人科医会などは、何の具体的な対策も講じなければ、将来的に全国で40〜50万人以上がお産難民≠ノなる可能性があると警告している。



更新:2008/01/25   キャリアブレイン

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08/01/25配信

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