「学位商法」(九天社)を購入し読み始めた頃、フジテレビ系列の夜10時からの「新報道プレミアA」という番組で、ディプロマ・ミルの問題を扱っているのを見た。番組では、ディプロマ・ミルの意味、実態、当事者のコメント、文部科学省の対応などが紹介されていたが、「学位商法」の内容と関連があるため、番組を見て気づいたことを述べてみたい。
まず、その1点目は、番組では、ディプロマ・ミルの影響(被害)の大きさについてあまり触れられていないような気がした。例えば、ニセ学位を取得した者が教育の場で、新たなニセ学位を生んでいる実態や、子供の教育や生命、健康に影響を与えていることなど、単に大学教授がニセ学位によって博士号を取得したというだけではないということについて、もっと言及してほしかったと思う。(「学位商法」第五章、第七章関連) 2点目としては、前早稲田大学教授の吉村作治氏のコメントについてである。彼は、この問題が発覚した際、週刊誌の取材に「シャレで取った。興味本位だった。」とコメントしていたが、今回は「私こそ被害者で、論文も提出しているし問題はない」と突っぱねており、その言動は一致していない。吉村氏は大学の学長にまでなり、しかも、テレビ出演などで著名な学者であるにも関わらず、この問題を反省もせずに被害者になり済ますことは許されるものではない。逆に、自分の過去を過ちと認め、ディプロマ・ミル撲滅のために力を注ぐべきではなかろうか。(「学位商法」第四章関連) 3点目として、文部科学省の対応についてであるが、文部科学省としてはホワイトリストを公表し、大学にディプロマ・ミルの学位取得者の調査を実施し、これも、不充分ながら公表したという事実はある。しかし、番組に出演した副大臣から、「徹底的に調査し、撲滅を図る」という意気込みが見られなかったのは、今後における不安を感じざるを得なかった。(「学位商法」第七章関連) 以上、不満な点はあったものの、テレビの報道番組の特集でこの問題を取り上げられたこと自体、非常に有意義であったことは間違いなく、マスコミにも、今後も広く国民に注意を喚起していく使命があるものと考える。(「学位商法」第七章関連) さて、「学位商法」を読んで、ドキュメントタッチでセンセーショナルな「学歴汚染」(展望社)と異なり、これを読めばディプロマ・ミルの全てがわかる内容で、ディプロマ・ミルについての知識がきちっと整理されたとの感想を持った。今後、ディプロマ・ミル問題に出会う人には、最初に「学歴汚染」で興味を持たせ、「学位商法」で整理するという順序で読むことを奨めたいと思う。 最後に、著者は「学位商法」の中で、吉田松陰の『士に貴ぶ所は徳なり、才にあらず。行なり学に非ず』という言葉を引用しておられるが、松陰同様、それを、まさに実践されていることに敬意を払いたい。 by darmouse | 2008-01-24 22:13
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