点検で発見しながら未補修のままとなっている首都高速道路の損傷が、平成18年度末で約6万件に上ることが24日、分かった。道路の管理運用にあたる首都高会社によると、安全性に影響を及ぼす緊急性の高い損傷は補修済みだが、放っておくと進行、危険性が増す恐れのある損傷が約1万8000件含まれている。旧公団からの民営化に伴ってコスト削減が義務付けられ、「なかなか補修費を工面できないのが実情」という。
首都高会社には補修費を捻出(ねんしゅつ)するため一層の経営努力が求められるが、道路の老朽化は確実に進み、直下型地震の発生も懸念されるなか、高速道路の補修態勢の在り方が改めて問われそうだ。
首都高会社は週3回のパトロール車による目視などで、高速道路の路面や橋げた、橋脚といった個所の点検を定期的に実施している。点検結果は緊急性に応じてA〜Dの4ランクに分けられる。
Aは橋脚の鉄筋の破断のように道路の安全性に影響し、すぐに応急措置と補修をしなければならない損傷。Bは数十ミリ程度のひびなど、1年以内に補修に着手することを目標とする損傷だ。Cは当面補修せずに経過観察でいい損傷、Dは「異常なし」となっている。
集計を始めた13年度以降の6年間で見つかったA、Bランクの損傷は累計約17万6700件。このうちAは約3200件で、原則として発見した年度内に補修をすませたという。
残り17万3500件はBで、その約6割の10万9800件は補修ずみ。未補修の損傷は約6万3700件で、自動車の通行で負荷がかかる橋脚や橋げたなどの損傷1万7900件を含んでいる。しかし、「こうした負荷がかかる場所の損傷は放置したままだと進行し、道路を支える強度が弱まる恐れもある」という。
すべての損傷を補修できない大きな理由として、首都高会社は17年の民営化に伴って維持修繕費や人件費を含む「管理費」が削減されたことを挙げる。
14年度に1250億円あった管理費は15年度以降、段階的に削られ、17年度は約30%減の約830億円。このうち維持修繕費に約280億円があてられ、補修費は点検や清掃などの費用を除いた約90億円にとどまる。
18年度以降も同レベルで推移して「完全な補修をするには不十分」なことから、点検費用を削減して補修費用に回すといった対策を強化。「新規採用や定期昇給の停止といった人件費削減などの取り組みも行っているが、なかなか補修費には回せない」という。
今後10年間で最大59兆円の道路整備費を計画している国土交通省は「高速道路の補修にお金を出すという議論は出ていない」(有料道路課)としており、国の援助も現状では期待できない。
ただ、昭和37年開通の首都高は総距離の約4割が築後30年超と老朽化し、今後も損傷は増えると予想される。不測の事態を避けるため、確実な補修は喫緊の課題だ。
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