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【健康】

出生前の超音波検査で見える… 胎児の頸部浮腫知らせるか否か 染色体異常の可能性示す 

2008年1月25日

 産婦人科で行われる胎児の超音波検査は、妊婦誰もが受ける“当たり前”の検査。出生前診断の一部だという認識は薄い。しかし近年、ダウン症など染色体異常の可能性が高いことを示す特徴が超音波検査で分かるようになり、医療現場に波紋を広げている。こうした中、日本産科婦人科学会、日本産婦人科医会では指針作りを進めている。 (吉田瑠里)

 問題になっているのは、妊娠後十−十四週たった胎児の首の後ろにできるむくみ。「頸部(けいぶ)浮腫(NT)」と呼ばれる。NTの厚みを超音波画像で測り、厚みがあるほど胎児の染色体異常の可能性が高くなる。この研究は一九九〇年代にイギリスなどで進められ、日本にも広がった。しかし超音波では異常の確率が分かるだけで、確定診断には羊水検査を受ける必要がある。

 名古屋市立大産婦人科の杉浦真弓教授は「胎児異常は意図しなくても見えてしまうときがある。超音波検査を行う前に、異常が分かったら告知を受けたいかどうか、妊婦さんの希望をあらかじめ確認しておくことが理想」と話す。

 超音波検査は、妊婦が産婦人科にかかると「受けるか、受けないか」を問われずに受ける。そもそも、妊娠十−十四週の時期に超音波検査を受ける意味は何だろう。杉浦教授は「妊婦さんの中には、超音波検査を子どもの記念撮影と思っている人もいる。しかし、目的は子宮外妊娠や流産が起こっていないか調べること」と言う。

 超音波画像の精度向上に伴い、妊娠初期から一ミリに満たない違いまで測れるようになり、NTを測ることによる出生前診断が出てきた。羊水や血液の検査と違い、妊婦に出生前診断を受ける意識がなく、医師側も調べるつもりがなくても、NTが厚ければ見えてしまうことがある。見えたら妊婦に告げるべきか、など取り扱いについて現時点では学会などの指針はない。倫理的な議論よりも技術が先走ってしまった。

 京都民医連中央病院は二〇〇四年九月、「胎児超音波検査におけるNTの取り扱いに関するガイドライン」をまとめ、初診時に妊婦に「超音波検査でNTを測ることはしない」という趣旨の文書を渡している。

 このガイドラインができる前、NTが「見えて」しまい、他院で確定診断を受けずに中絶した妊婦がいた。その一方で他院で羊水検査を受けて異常がなく、妊娠を継続した例もあった。産婦人科の西田秀隆医師は現場の混乱を感じ、同病院の倫理委員会に提議。委員会は難航したが「日本には多くの病院があり、病院のスタンスで選ぶことができる。だから当院では最初にNTを見ない、と文書で伝えておこう」と意見がまとまった。

 「見えても言わない、と決めた文書があるから今は心理的に負担がない」と言う西田医師は「胎児のすべての異常を知ることが良いかは分からない。多くの人は漠然と元気な子が欲しいだけで、確実に元気な子を選びたいのか分からない」と感じている。

 日本産科婦人科学会と日本産婦人科医会は今年四月、お産について六十項目余りのガイドラインの冊子を刊行する予定で、その中にNT計測値が大きかった場合の医師の対応についても盛り込まれる見通しだ。

 

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