「カツ丼でも食うか」と、取り調べ室で刑事が犯人にどんぶりを食べさせるのは漫画の世界であって、現実にはあり得ないと知り合いの元警察官はいう 富山や鹿児島県警の冤罪事件を受けて警察庁が取り調べ適正化の指針をまとめた。容疑者の体に触れることや尊厳を害する言動のほか、便宜供与も監督対象になっている。カツ丼提供はその便宜供与に該当しよう 仮に裁判で「カツ丼を食べさせてもらったので自供した」と証言されると検察の立場は悪くなるわけだが、カツ丼伝説の背景を考えてみたい。容疑者の心を理解しようとする刑事の姿が読み取れると思うからである 人間には二つのタイプがあると言うのは先の警察OBの思いである。悪いことはすべて他人と世の中のせいにする者と、何でも自分のせいにして罪を背負い込む者と。正反対だが、共に心が飢えている。そこを見極めて「心のカツ丼」を勧めるのが人間味のある真実追及というものだ 大量退職のベテラン警官再雇用のカギもそこにある。警察庁が取り調べ適正化の「仏」をつくっても、現場で「魂」を入れ、受け継ぐ者を育てなくては絵に描いた餅になる。
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