信用力の低い人向け住宅ローン(サブプライムローン)問題の影響による世界同時株安を受け、米連邦準備制度理事会(FRB)は政策金利を0・75%引き下げ年3・5%とする緊急利下げに踏み切った。
FRBの緊急利下げは、米中枢同時テロ直後に行って以来、六年四カ月ぶり。しかも、今月末に予定されていたのを前倒しした。「米国の成長後退と世界的な景気悪化を何としても阻止しよう」とのFRBの強いメッセージが感じられる。
昨年夏にサブプライム問題が表面化して以来、米政府の対策の遅れもあって状況は悪化していった。十二月には、失業率が約二年ぶりに5%台に上昇した。さらにサブプライム関連で米大手金融機関の巨額損失が相次ぎ、米国だけでなく世界の株価や経済へ影響が広がった。
東京株式市場では、今月二十二日の日経平均株価が欧州やアジアの株価下落に円高の進行も加わり、二年四カ月ぶりに一万三〇〇〇円を割り込んだ。年初からの下落は二七〇〇円を超えた。
今回の世界同時株安を加速させたのは、先にブッシュ米大統領が発表した緊急経済対策の概要である。総額が最大で千五百億ドル規模(約十六兆円)で、個人所得税の一部を返す「戻し減税」や企業の設備投資を促す税制優遇の拡充が柱だが、新味の乏しさなどが指摘された。期待感は失望に変わった。そこで急きょ打ち出したのが今回の利下げだ。必要に応じ追加措置もとるとしている。
これに比べると日本政府の反応は物足りない。関係閣僚は「基本は米国発。今の時点で日本で対策を講じるのは難しい」「静観する」といった具合である。確かに震源は米国だが、日本株離れを招いている要因には、福田政権の構造改革に対する意欲の乏しさなどが挙げられよう。さらに「ねじれ国会」での与野党による政治の混乱が投資家や企業、消費者の心理を冷やしてきたといえる。
日銀の福井俊彦総裁は市場動向に警戒を強めるとしながらも、金融政策決定会合で金利は据え置いた。緩やかな利上げを探ってきた福井総裁だけに、三月の任期満了を前に複雑な心境だろう。市場からは利下げ圧力も強まっている。しっかり見極め、誤りなき選択が求められる。
緊急利下げの市場への効果は、まだ不透明だ。二月には東京で先進七カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)が開かれる。市場の悪化を実体経済に及ぼさぬよう、日本は強い決意で各国の協調をリードすべきだ。
前防衛次官汚職事件で、東京地検特捜部が前次官守屋武昌被告を収賄罪と、国会の証人喚問で虚偽の証言をしたとの議院証言法違反(偽証)の罪で追起訴した。守屋被告に対する汚職捜査はこれで終結した。
起訴状によると、守屋被告は次官在任中の二〇〇三年九月―〇七年四月に、贈賄側の防衛商社「山田洋行」元専務から装備品納入をめぐる便宜供与の見返りに計百八回、約四百九十七万円相当の日帰りゴルフ接待を受けた。また、昨年十月の衆院テロ防止特別委員会での証人喚問で、元専務からゴルフ接待を受けた際にプレー代金を払っていなかったのに「毎回一万円ずつ払った」と証言するなどした。
守屋被告の収賄罪での起訴は今回で三回となり、わいろ総額は約千二百五十万円に上った。範を示すべき事務方トップが接待漬けになっていた異常さがあぶり出された。見返りにどのような便宜供与が行われたのか、司法の場で明らかにしてもらいたい。
山田洋行をめぐっては、旧防衛庁発注の毒ガス弾処理事業の下請け参入や、米国メーカーの代理店契約を維持するため防衛族議員らとの関係が深い社団法人「日米平和・文化交流協会」側に総額一億円以上を提供した疑惑が浮上している。防衛族議員を通じて米政府元高官に働き掛けたことを示すなどした内部文書があることも判明した。
協会の秋山直紀専務理事は、国会の参考人質疑で疑惑を否定したが、説得力は乏しく、疑念は払しょくされていない。特捜部は、山田洋行による防衛族議員らに対する政界工作の有無などについて慎重に捜査を進めるとみられている。防衛利権をめぐる政界ルートが闇に葬られるようなことがあってはならない。
(2008年1月24日掲載)