太陽に最も近い惑星・水星へ今月中旬に接近した米航空宇宙局(NASA)の探査機「メッセンジャー」の撮影した写真が、公開され始めた。
NASAのサイトなどで、遠景からクローズアップまでさまざまな映像が見られる。表面はクレーターだらけで月面そっくり。はるかな昔、太陽系に何が起きたのか。素人なりに考えを巡らせてみるのも楽しい。
水星のあばた面を初めて撮影した米探査機「マリナー10号」の最後の接近から、三十三年がたつ。技術が進んだとはいえ、探査機を送るには膨大な費用と手間がかかる。星は、今も人を容易に寄せつけない孤高の存在である。
水星は問題を与え、答えを考えさせる先生でもあった。十九世紀、天文学者たちは太陽を回る水星の運動を詳しく調べた。得られた結果は従来のニュートン力学とどうしても合わなかった。
頭を抱えた学者たちは水星の内側にある未知の惑星の影響と考え、惑星には「バルカン」と名までついた。だが、アインシュタインの相対性理論の登場で水星の運動が見事に説明され、彼の理論の正しさを証明すると同時にバルカンの存在は否定された。
水星はメッセンジャー(伝達者)を介し、今度は何を教えてくれるのだろう。地球からの新たな使者はあと二度水星に接近して軌道を変え、三年後に水星を回る軌道に入る。本格的な観測はそれからだ。