大阪放送局

2008年1月24日 18時38分更新

“ウィルス作成者”逮捕全国初

コンピューター内のデータを破壊するウイルスを作成し、アニメ画像にひそませてインターネット上に配布したなどとして京都府警察本部は、大阪の大学院生の男を著作権法違反の疑いで逮捕しました。コンピューターウイルスの作成者が逮捕されるのは国内で初めてだということです。

逮捕されたのは、大阪・泉佐野市に住む大阪電気通信大学の大学院生、中辻正人容疑者(24)です。京都府警察本部の調べによりますと、中辻容疑者は、去年10月から11月にかけてコンピューターウイルスを作成したうえで、インターネットで手に入れた「クラナド」という名前のアニメ画像にひそませて▼インターネット上に配布したほか、▼画像の内容も改変した著作権法違反の疑いが持たれています。
インターネットからこのアニメ画像を入手した人が画像を見ようとしてファイルを開くと、ウイルスが起動してパソコン内にあるデータを中辻容疑者のパソコンにコピーした上でもとのデータを破壊する仕組みになっているということです。
コンピューターウイルスは作成したこと自体を直接、処罰する法律はありません。
しかし警察は、もとのアニメ画像に、ファイル交換ソフトのWinnyなどを使っている人をあざけり、脅すような文言を書き加えている点が著作権法違反の「画像の改変」にあたるなどと判断し逮捕に至りました。
ウイルスの作成者が逮捕されるのは国内では初めてです。
調べに対し、中辻容疑者は「ウイルスを作ったのは僕です。
このアニメ画像を使ったのは話題性があるからです」と話し容疑事実を認めているということです。また、もとになったアニメ画像を不正にインターネット上に配布していたとして、大阪府と兵庫県のいずれも30歳台の男2人も著作権法違反の疑いで逮捕されました。警察は、犯行の動機や余罪について追及することにしています。
逮捕された中辻容疑者は、大阪・寝屋川市にある大阪電気通信大学の大学院生で、デジタル通信技術などについて研究する電子通信工学を専攻しています。
研究のテーマは半導体レーザーの解析で、研究の上ではコンピュータープログラムを作成することはないということです。
大学が中辻容疑者について学生らに聞き取りを行ったところ「研究態度はまじめで、後輩の学生にも親身に指導していた。
きのうも、普段通り夜8時ごろまで大学に残り、測定データの処理にあたっていた」ということです。大阪電気通信大学の岸岡清学生部長は「情報を扱う技術者を育成する大学として授業では倫理教育を重視してきたが、こうした事態になって衝撃を受けている。世間をお騒がせしておわび申し上げたい。今後、学生に対してこれまで以上に倫理教育の徹底を図っていきたい」と話しています。
インターネットでの犯罪や法整備に詳しい甲南大学法科大学院の園田寿教授は「現在の法律ではウイルスの被害が実際に出ないと処罰の対象にはならない。
今回は実際の被害がなく、変則的に著作権法違反での逮捕となった。ウイルスの作成者まで処罰するのが国際的な流れで日本でも法整備が求められている。
ただ、こうした技術は、役に立つソフト開発にも応用できるもので、技術者への妨げにならない範囲で今後どこまでを処罰の対象にするのか難しい面もある」と指摘しています。