社説(2008年1月24日朝刊)
[文化財保護]
防災意識の低さ気になる
沖縄戦で多くの文化財が消失したとはいえ、県内各地には琉球王朝時代から続く県人の豊かな文化財がまだまだ残されている。
私たちの祖先が営々と築き、守ってきた文化遺産はその精神的な活動を裏づけるものといっていい。
世界遺産群の一つである首里城をはじめ周辺に点在する円覚寺跡、弁財天堂跡など王府時代ゆかりの遺跡は大交易時代を彷彿とさせ、独自の精神性を感じさせる。
しかし、どうだろうか。私たちは身近にあるこのような文化遺産に愛着を持ち、守っていこうという気概があるといえるだろうか。
文化庁が仏像や絵画、建造物など国や自治体指定の文化財を有する千七百四十九市町村を対象に実施した調査によると、二〇〇七年の「文化財防火デー」に合わせた文化財防災訓練の実施率は沖縄は22%(全国平均は49%)にすぎなかったという。
北海道が15%、続いて長野県21%。沖縄は全国で三番目の低さである。
これでは大切な文化遺産を守り、未来に伝えていくために必要な防災意識が欠けていると言わざるを得ない。
そればかりではない。消火器や火災警報器などの消防設備を点検した市町村も、全国平均52%に対し沖縄は22%で最低の低さである。
これではいざというときに素早く火を消したり、警報を鳴らして人々を避難させ、文物を運び出すための応援を呼ぶこともできないのではないか。
世界でも有数の地震国にあって、琉球列島の東側を西表島まで霧島火山帯が貫く沖縄もまた地震災害がないとは決して言い切れない。
一九五〇年に文化財保護法が制定されたあと、国指定文化財の建造物八十二棟、美術工芸品二十七点が火災で消失、破損していることを考えれば、防災に対する備えを怠るべきではない。
祖先から継いだ精神性を次代に引き継ぐには、私たち自身が文化遺産に目を向け、保全する意識をはぐくむことが欠かせないからだ。
那覇市に寄贈された国宝を含む尚家伝来の宝物を守る態勢は十分かどうか。県立博物館もまた日常的な検証に力を入れる必要がある。
二十六日の「文化財防火デー」は、四九年に奈良・法隆寺金堂での火災で、国宝の壁画が焼けたのを受けて制定された。
文化財を守っていくには行政、教育関係者はもちろんだが地域住民の意識も大切な要素になる。
これを機に防災の在り方を再点検し、火災などに遭遇しても慌てないで対応できる心構えを培っておきたい。
社説(2008年1月24日朝刊)
[観光客]
もっともっと外国客を
二〇〇七年一月からの年間入域観光客数が五百八十六万九千二百人に達し、六年連続過去最高を更新した。前年比4・1%(二十三万一千四百人)増となり、第二次県観光振興計画の〇七年目標の五百八十万人を突破した。
国内客は空路の客が増え、2・7%増の五百六十九万四千六百人。外国客は86・9%の大幅増で十七万四千六百人。定期クルーズ船の再開やチャーター便の運航増などが要因だが、全体に占める割合は約3%にすぎない。
県は、今後も、国内客は二―三月の航空各社の沖縄路線キャンペーンで堅調に推移。外国客は韓国の定期便、台湾、香港、韓国からのチャーター便運航で順調と楽観視している。
だが、懸念材料もある。航空各社が燃料価格の高騰に伴い、国内線の片道と往復の普通運賃を四月から一律約9%の値上げに踏み切るからだ。
仲井真弘多知事は観光客一千万人を目標にしている。それには外国客の増加が至上命題だ。私たちの身近な外国といえば、中国、韓国、台湾、香港といっていいだろう。外国客から見て県が魅力ある観光地か。好調な今こそ、きめ細かな点検が必要ではないか。
美しい海、砂浜が広がる自然、相手をもてなす県民のホスピタリティー、食をはじめとする長寿ブランドなどは外国客受け入れの財産だ。
ただ、観光案内所の設置は十分だろうか。外国客にその国の言葉で応対できる職員が常駐しているかどうか。外国客が必要とする情報がすぐ提供できるシステムが出来上がっているか。
例えば、交通機関の時刻や料金、目的地までのアクセス方法、宿泊料金などが一目で分かるホテルのリスト、飲食店、両替のできる場所、あるいは予期せぬ事故に巻き込まれた場合の医療機関の紹介などが整えられているか。
外国客を迎える国際線ターミナルをはじめ、観光地にふさわしい空と海の玄関口の整備も求められよう。
外国客の視点で、県内の現状を徹底的にチェックし、不備があれば、早急に整備を急ぐべきだ。
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