戦時中に強制労働させられた韓国人らの遺骨返還活動をしている市民団体「強制連行・強制労働犠牲者を考える北海道フォーラム」(共同代表・殿平善彦さんら5人)が2月、組織結成から5年で初めて4人の遺骨を遺族に返すことになった。22日には04年の日韓首脳会談の合意に基づき遺骨101柱の返還が東京都内で行われたが、国は企業で働かされた人の遺骨返還は民間の責任との立場で、対象は軍関係者に限られている。4人は製鉄所と炭鉱で働かされた人たちで、道内にはほかにもたくさんの遺骨が眠っているとみられる。
返還する4人のうち3人は室蘭市の製鉄会社で強制労働させられ、45年7月の米軍の艦砲射撃で死亡した。当時15~17歳だった。遺骨は同市内の光昭寺に安置されている。残る1人は赤平市の炭鉱労働者で、46年11月に39歳で病死。同市内の宝性寺に遺骨がある。
フォーラムは各地に納められている遺骨を探し、遺族を突き止める活動を続けている。ただ、遺族側には強制労働の真相究明や責任、補償の問題を明確にしなければ返還に応じないとの意見も根強く、活動がなかなか進まないのが現状だ。今回は遺族の了解が得られ、2月26日に遺骨を持って韓国へ渡る。
戦時中、道内には14万5000人が強制連行されたといわれるが、死亡者数や帰還者数など詳しい実態は不明だ。フォーラムは現在、121柱の遺骨を確認しており、今後も返還活動を続ける。
今回は200万円を募金で集め、遺族に渡す計画もある。2月24日午後3時、札幌市中央区北3西19の本願寺札幌別院で、強制労働を考える集会を開く。問い合わせは事務局がある深川市の一乗寺(0164・27・2359)。【去石信一】
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◇強制連行
第二次世界大戦中に日本国内の労働力不足を補うため、朝鮮半島から道内へ約14万人、中国から約2万人が強制的に連れて来られ、製鉄所や炭鉱などで労働させられた。その間、死亡した者の遺骨は道内の寺院などに安置されたが、どれだけ残っているのか不明。生存者や遺族が日本に対して損害賠償や謝罪を求める裁判が全国で起こっているが、韓国人のケースは65年の日韓基本条約、中国人は72年の日中共同声明に基づいて個人に補償の請求権はないとして、原告側が敗訴している。札幌高裁も昨年6月に同様の判断をし、原告側が上告した。
毎日新聞 2008年1月23日