船井幸雄の「この人いいよ!」

このページでは、超幅広い船井幸雄の人脈の中から、船井幸雄がぜひ皆さまに紹介したいと思う人を、さまざまな角度からご紹介します。

政治も経済も、日本の弱点は主体性のなさにある!
大切なのは国民が真実を知ること

昨年の9月に安倍政権がスタートしました。今後の日本の、そして世界の行く方向が気になるところです。そこで今回、時事評論家で国際金融スペシャリストの増田俊男氏に、今後の日本とアメリカ、そして北朝鮮問題などを中心に語っていただきました。
日本の財政状態についてのお話の中では、「増税どころか、減税するほど国の財政は健全だ」など、まさに目からウロコの増田説を伺うことができました。以下には、私たちの常識がひっくり返るような衝撃の内容満載です。

時事評論家、国際金融スペシャリスト・増田 俊男さん

時事評論家、国際金融
スペシャリスト・増田 俊男さん

プロフィール
増田 俊男(ますだ としお)時事評論家、国際金融スペシャリスト
1962年慶應義塾大学商学部卒業後、東急エージェンシーを経て1974年アメリカンドリームを求め渡米。全米で事業展開。1986年から先住ハワイアンの土地奪還請求運動支援、ハワイアンに対するアメリカの公式謝罪運動など支援。アメリカの有識者に友人が多い。
1995年帰国。時事評論家、国際金融スペシャリスト。著書「敗者の論理、勝者の法則」(プレジデント社)、「日本経済大好況目前!」(アスコム)、「史上最大の株価急騰がやってくる!」(ダイヤモンド社)、「日本大復活」(PHP研究所)、「空前の内需拡大バブルが始まる」(ダイヤモンド社)、「そして、日は昇った!」(PHP研究所)など多数。
―昨年の9月に安倍政権がスタートし、今後日本は、そして世界はどのようになっていくと考えられますか?
増田:まず、日本では安倍政権が昨年9月に発足しました。一方、日本に最も影響力のあるアメリカでは、昨年の11月に中間選挙が行われました。その結果、ブッシュの共和党が敗れ、民主党が議会の勢力をにぎりました。現在、議会は民主党になり、実際にホワイトハウスで政治を行うのは共和党のブッシュという、中途半端な状況になっています。このような中、ブッシュの力はしだいに弱まっていくのではないかといわれてきました。そんな中、クローズアップされてきたのがイラクの問題です。
 アメリカ国内でも、「イラクに対するブッシュ政権の政策は間違っていた」という世論が高まり、「アメリカ軍はイラクから撤退すべきだ」という世論も出てきています。しかしそれに従うどころか、ブッシュはイラクへのアメリカ軍兵士の増派を決定し、実行に移しています。
 一方、日本にとって重要なことに、北朝鮮の核問題と拉致問題があります。北朝鮮が核を持ち、核を持たない日本の安全は非常に脅かされています。

増田俊男氏著『そして、日は昇った!』(2007年2月 PHP研究所刊) 1470円(税込) 

増田俊男氏著
『そして、日は昇った!』
(2007年2月 PHP研究所刊)1470円(税込)
 さらに、人道上の非常に重要な問題として、北朝鮮による日本人の拉致問題があります。この拉致問題を日本は解決しなければなりません。
 この二つの問題を解決するため、日本はアメリカの協力が必要になります。というのも、日本は自衛隊という戦力を持ってはいますが、「国際問題を解決するために武力行使はしてはならない」と憲法9条で定めています。だから北朝鮮の核の脅威に対して、日米安全保障条約によるアメリカの核の抑制力なくして、日本の安全は確保できないのです。日本はアメリカに守ってもらわなければならないという立場にいるわけです。
 このような理由から、「北朝鮮問題」は、日本と北朝鮮との間だけでは解決はできず、アメリカのバックアップ、すなわちアメリカの保障が常に必要になってきます。
日本と北朝鮮との問題の実態とは?
増田:しかも現在、日本と北朝鮮との問題は、「6カ国協議」で討議しなければならないことになっています。「6カ国協議」の6カ国というのは、アメリカ、韓国、中国、ロシア、日本、北朝鮮です。
 つまり日本は、北朝鮮の核問題解決のための交渉は、日本以外の国の参加している「6カ国協議」で行わなければならず、非常に主体性のない状態下にあります。いわば「あなたまかせ」という感じですね。このような状況下では、拉致問題もなかなか進展していきません。

増田俊男氏著『そして、日は昇った!』(2007年2月 PHP研究所刊) 1470円(税込) 

 実際、日本が「拉致問題を『6カ国協議』で解決しよう」と主張すると、北朝鮮側は、「拉致問題はとっくに解決済みだ。いま『6カ国協議』で話しているのは核の問題だ。核の話をしているので、拉致問題など話す場ではない」と言ってくるわけです。しかし日本にしてみれば、拉致問題は何も解決していません。他の国にも「拉致問題は、日本と北朝鮮の問題だから、この『6カ国協議』で話す問題ではない。ここで話しているのは、北朝鮮の核の問題だ」と言われてしまうのです。そこで日本がアメリカに拉致問題解決について相談すると、アメリカは、「『6カ国協議』で話をすればいいではないか」と言って、相手にしてくれないのです。このように、現在の日本は、どこにもとりつくシマのない状態に置かれています。
日中関係はどうか?
増田:では、日本と中国との関係はどうかというと、小泉政権の時代には、「靖国神社参拝問題」があって、外交上、良くありませんでした。中国側は、「『靖国神社参拝問題』を解決しないかぎり、日中の国交正常化はない」という姿勢を崩さず、一方、小泉さんはずっと「靖国神社に参拝する」と言って譲らなかったからです。
 とはいえ、経済面では日中関係は良好でした。日本から中国への投資は、2004年から急増し、その後もずっと増えています。この日本からの投資については中国も大いに歓迎ということです。
そんな中、安倍政権が2006年9月に発足しました。すると5年間、日中間ではまったく首脳会談が行われていなかったのに、安倍政権が発足するやいなや、首脳会談が実施されました。それだけ、中国は日本に対して経済面で期待しているということでしょう。
 中国経済というのはそもそも、すべて外国からの直接投資で成り立っています。日本をはじめアメリカなどの外国からの投資が途絶えると、中国経済は行く手を閉ざされてしまうのです。中国経済は、「外国からの直接投資」「外国からの技術」の二つで成り立っています。これらなしには中国経済は存在しないといえます。
 では、中国経済のどこに、そんなにお金や技術を投資するだけの魅力があるのでしょうか? 
それは、中国の労働力の賃金が安いということと、中国の通貨が安いという二つにあります。これらがあるかぎり、中国にお金を投資し、技術を持っていくことが非常に有利になるのです。つまり投資効率が非常に高いということです。
 さらに、中国の国内の需要も非常に大きくなってきています。人口が13億人もあり、中国人の生活水準はだんだんと上がってきているので、仮に中国で一人が一台の自動車を持つような時代になれば、13億台の自動車の需要ができるわけです。自動車の需要が増えれば、当然、高速道路などのインフラの需要がどんどん増えていきます。そうなると、それをつくるためにはますます外国の資本や技術が必要になるので、ますます外国からお金や技術が中国へ流れるようになります。そして中国以外のアジアの国でも同様の発展をみせているのです。
 このように中国経済が急速に伸びているということは、日本にとって経済面でとても好都合なことです。実際、日本の製造業は、中国への輸出で非常に潤っています。
アメリカの経済も好況
増田:さらに現在は、アメリカの景気が非常に良いのです。アメリカが好況だということは、アメリカへの輸出がどんどん伸びているということです。自動車をはじめ、日本の製品がアメリカにどんどん流れています。これもアメリカが好況だから実現することです。このように、日本の景気を支えているのは、一つは中国の好況(成長)、もう一つはアメリカの好況です。これらによって日本の経済が支えられていて、これらが日本の経済の基盤になっています。
 しかし考えてみるとそれは、日本は経済においても、北朝鮮問題と同様、主体性がないともいえるのです。日本の景気はアメリカや中国や他のアジア諸国の景気に大きく左右されるわけですから。相手の調子が悪くなると、それにともない、日本の調子も悪くなってしまうということです。これが日本経済の最大のリスクだと言っていいでしょう。
主体性のあるアメリカの経済
増田:一方、アメリカの経済はどうかというと、非常に主体性があるのです。まず、アメリカ経済は「消費」と「設備投資」で成り立っています。
 アメリカの消費と設備投資はともにずっと伸び続けています。しかも、それらを伸ばすために、アメリカは自ら財政政策と金融政策(=経済政策)を打ち出し、実現させています。つまり、非常に自主性があるということです。さらにアメリカは世界の経済の趨勢(すうせい)をちゃんと見越しているので、自国のみならず世界の経済の主導権を握っているといえるのです。
 具体的に説明すると、クリントン政権の時代に「IT時代」、「IT産業(ブーム)」という言葉がありました。クリントン政権は、軍事産業の予算を60%も引き下げ、その代わりに、「IT産業」のようなソフト産業への投資を増やしました。たとえば、アメリカの国中に光ファイバー網を張りめぐらせるという政策を打ち出し、それに対する投資を各国から募りました。すると、世界中からアメリカにお金が一極集中してどんどん流れてくるわけです。それにともない、アメリカのソフト産業の株価がどんどん上がりました。潤沢なお金がアメリカに入ってきたので、それを使って、アメリカはどんどんソフト産業への投資をしてきました。
 これはとても主体性がありますね。「あなたまかせ」ではなく、自分で戦略を打ち出し、ソフト産業の「大好況時代」というのをつくったのです。
 しかしクリントン政権が終わって、ブッシュ政権にバトンタッチすると、一挙に株価が暴落して、ITバブルが崩壊しました。バブルが崩壊したため、アメリカに一極集中していた世界のお金がすべて目減りしてしまいました。だからアメリカに投資した投資家たちがみんな損をするという状況に陥ったわけです。
 しかしこの時、世界の投資家たちは損をしましたが、アメリカは損をしませんでした。なぜなら、世界からアメリカへ投資されたお金をアメリカはすでに使ってしまった後に、株価は大暴落してしまったわけですから。この時もアメリカは、ちゃんと主導権をにぎっていたということです。
ITバブル崩壊一変、戦争好景気に
増田:そして、このアメリカのITバブル崩壊とともに世界は不況に陥ってしまうと思いきや、ブッシュ政権になると、2001年9月11日に同時多発テロが起こりました。そこからアメリカは世界に向けて、戦争宣言をするわけです。「これからは戦争時代だ。アメリカは世界に向けて、テロ撲滅のために戦争をやるから、皆、アメリカに従え」と、こういうわけです。すると、世界各国も「じゃあ、アメリカに従おう」となりました。 
 このようなことで、いきなり戦争時代になったのです。そうすると、クリントン時代に軍事予算を60%も減らしたのに、今度のブッシュの時代は戦争時代ですから、戦争予算が一気に増えました。軍事予算がアメリカで計上され、これがすべて兵器に変わっていきました。アメリカ軍兵士もイラクにどんどんと送られました。そして戦争が始まったのです。つまり、「ITブーム」から一挙に戦争に変わっていくわけですよ。
そうすると、アメリカは軍事予算を投資して、兵器をどんどん製造するから、軍事産業はまたたく間に景気が良くなってきました。あらゆる兵器産業の会社がどんどん膨らんでいきます。そして軍事産業の下請けの会社やまたその下請けの会社までも好況になってきました。すなわち、今度はソフト産業ではなく、ハード産業が潤ってきたのです。このように戦争のおかげでアメリカの景気はまたたく間に良くなっていきました。
 そしてそれにともない、日本の鉄鋼や機械などのハード産業の景気もどんどん良くなりました。日本の景気はアメリカに引っぱられているわけですからね。
 このように、アメリカは世界の経済を完全に牛耳って、主導しています。すべての主導権を握っているのはアメリカなのです。アメリカの主導のとおりに世界が動いています。アメリカが不況になれば世界が不況になり、アメリカが好況になれば、世界が好況になります。そしてそれはアメリカの経済政策にかかっているのです。
 こういうしくみになっているので、世界の経済や日本の経済が今後どうなっていくのかを知るためには、アメリカがどういう政策や戦略を打ち出しているかを知ることがまず必要になってくるのです。
 だから、日本の将来を考えるとき、私たちが学ばなければならないのはアメリカであって、日本ではないのです。日本はそれこそ浮き草のようなもので、主体性がないのです。あっちに流されるかこっちに流されるか分らない・・・、まあそういうのが安倍政権と考えていいのではないでしょうか。まあ、安倍政権に限らず、小泉政権もそうだったのですが。

帝国ホテル内にあるサンラ・ワールド(株)の事務所。常に日経株価の動きが伝えられる大画面があります。

帝国ホテル内にあるサンラ・ワールド(株)の事務所。常に日経株価の動きが伝えられる大画面があります。

―世界の仕組みがそのようになってしまっている中で、状況改善のために私たちにできることはあるのでしょうか?
増田:やはり本当のことを知ることが大事だと思います。
 政府というのは実は、政治を行う本当の意図を、国民には絶対に知らそうとしないものなのです。昔からの政治の鉄則に、「民はよらしむべし、知らしむべからず」というのがあります。
 どういうことかというと、よらしむべしとは、国民に「『信頼できる。何でもいいからおまかせします』と思わせなさい」ということなんです。国民に人気があって、よく分からないけど「ガンバレ、ガンバレ」と国民に思われると、それはもう大成功なんですよ。
 そして知らしむべからずとは、国民に事実を知らせてはいけないということです。では、国民に何を知らせるかというと、良いことだけ知らせるのです。「改革なくして成長なし」とだけ言ったら耳触りがいいですよね。しかし「改革って何なのか」という中身は絶対に知らせてはいけないのです。その改革の意図や目的なども絶対に知らせてはいけないのですね。
 これは日本にかぎらず、アメリカでも、世界中で共通している政治の鉄則です。これが政治家や官僚の哲学で、これを実行しなければ、国家は運営できないものなのです。
日本の財政状態は超健全!?
増田:たとえば、日本の財政状況の実態なども絶対に知らせてはいけないことですね。
「日本は借金大国で、明日にもつぶれるかもしれない」ということを国民に思わせて、国民に一生懸命働いてもらうことが大切なんですね。
 「国の借金が大変だ、財政を健全化しなければ、日本はいつ潰れるか分らない」などということを書いた本が出回っています。そこには「国の借金は827兆円です―、これを国民一人あたりの人口で割ると、一人あたり648万円になります。赤ちゃんがオギャーと生まれると、その途端に648万円の借金を抱えることなのです」ということが書かれているのです。テレビなどのメディアでもずっとそのような情報が流れています。すると、国は大変なのだと国民は思ってしまいます。実は政府の狙いはそこにあるのです。そうなると国民は、消費税の引き上げも「やむを得ない」と思ってくれるわけですから。
 しかし、実際のところ、日本は借金大国なんかではないのです。現金は十分に持っているのです。その証拠に日本は世界中にお金を貸しています。だから日本は世界最大の債権国です。そしてどこの国からもまったくお金は借りていません。
 政府は日本には827兆円の借金があると言います。しかし、その貸し手は外国ではないのです。すべて国内なのです。日本の借金の債権者は誰かというと、郵便貯金や簡易保険、日本銀行などの公的機関が半分を占め、銀行などの民間金融機関が約3割、その他は個人で、海外からの投資はたったの3%ほどです。ということは日本国民は「国の借金」の債権者なのです。
 国が借金をするのは、借金の額面を増やすことが目的なのです。借金の額を数字で国民に見せて、国がこんなに借金をして大変なのだと、国民に示すためなのです。実際は、現金が十分あるのですから、借金をする必要などありません。さらに、国は、民間の銀行などから借金をするのですから、民間の銀行に国は利息を払います。では利息分のお金はどこからくるかというと国民の税金です。つまり民間の銀行に利息分として国民の税金をあげるために国が借金の額を増やしているという構図なのです。
 こうやって借金をつくり、国が「借金で首がまわりません」と言っておくと、国民は一生懸命働いて税金を払いますよね。そして増税すると、それが銀行に、利息分として流れるわけです。
 こういうことも、「民に知らしむべからず」ということなんです。

増田俊男氏著『そして、日は昇った!』(2007年2月 PHP研究所刊) 1470円(税込) 

事務所内の壁には、増田氏が世界中の著名人と写っている写真が多数飾られています。

 それでは国民は騙されっぱなしでどうしようものないのかという話になりますね。本当ならば、こういう政府の行っていることの実態をあばいて、国民に本当のことを知らせる、いわば国民のお目付け役として、マスコミが存在しているはずなのです。しかし実際はそうはなっていません。マスコミも国民と同様に知らされないのです。財務省が必要な数字はすべて発表しているのだから、それをマスコミが分析をして真実を知らせればいいのです。しかし彼らは分析の仕方を知らないのです。このようなマスコミの無知が国民にとっては大きなマイナスになっているのです。
 実際は、日本の財政状態は非常に良いのですよ。このことは、私の新著『そして、日は昇った!』(2007年2月 PHP刊)を読んでもらったら分かると思います。財務省が発表した数字を全て載せて私がきちんと分析していますから。この本を読むと日本は「借金王国」どころか「金貸し天国」だということがよく分かると思いますよ。財務省のデータはホームページで見られるのですから、それで調べてみたらいいのですよ(財務省ホームページhttp://www.mof.go.jp/)。皆さんどうぞお一人おひとりで調べてみてください。
 これからは国民一人ひとりがそういう大切な真実を知り、勉強することが必要になってくると思います。
―増田さん、今日はお忙しい中、どうもありがとうございました。
船井幸雄よりのコメント
 増田さんと私は特に親しい。実は私は増田夫妻の仲人でもある。彼の発言はよく分る。「なるほど」と思う。ただ私の友人に彼とまったく逆のことを言っている財政学者がいる。森木亮さんだ。まじめな人である。だから私は、いま増田さんの近著『そして、日は昇った』('07年2月9日、PHP研究所刊)と森木さんの近著『日本は破産する』('07年2月11日、ビジネス社刊)の両方を併せ読み、各自でより勉強し、考えることを奨めている。
増田俊男氏ホームページ『増田俊男の世界』:http://www.chokugen.com/

時事評論家、国際金融スペシャリスト・増田 俊男さん

時事評論家、国際金融スペシャリスト・増田 俊男さん

増田俊男事務局 サンラ・ワールド(株)発行の月刊「力の意志」(07年1月号と2月号)
購読申し込みはサンラ・ワールド(株)へ。TEL:03-3955-2121 FAX:03-3955-2122 mail:info@sunraworld.com
このページのトップへ