レアメタルが禁輸になる日中国商務部ウェブサイトが掲載した“本音”
中国商務部のウェブサイトに掲載された問題の記事。このままでは中国が金属資源小国に陥りかねないと強い論調で警告している 「すべてのレアメタル(希少金属)及び圧倒的多数の製品を完全に輸出禁止商品に位置づけ、高付加価値製品の輸出品についても重税を課すなどしなければ、大量流出の事態を変えることはできない」 昨年11月、中国商務部のウェブサイトにある記事が掲載された。発信元は中国国営通信社の新華社。「我が国のレアメタルの優位が崩れる─発展戦略の調整が焦眉の急」と題するこの記事では、中国は産出するレアメタルを自国の経済発展のために使うべきだと、強い言葉で訴えている。資源ナショナリズムが中国国内で高まっていることを感じさせる記事だ。冒頭の文章は、記事のエッセンスとも言える部分を日本語訳したものだ。 記事の示唆通りに進む現実この記事は中国国内でも業界紙など一部でしか報じられておらず、日本では全くと言っていいほど知られていない。しかし掲載から3カ月、事態は明らかにこの記事が示唆する方向に進み始めている。 レアメタルは、世界的に生産量が少ない31種の金属鉱物の総称。消費量は鉄や銅に比べてごくわずかだが、ハイテク製品の性能向上に欠かせない素材として、近年注目度を高めている。 戦後最長の景気拡大を牽引した自動車産業。花形とも言えるハイブリッド車の駆動モーターは、「レアアース(レアメタルのうち希土類17種の総称)」の一種である「ネオジム」を使った磁石なしには動かない。鋼材の切削に使う超硬工具は「タングステン」が原料。液晶テレビのガラス表面に透明電極を作るには、「インジウム」が必要になり、外枠樹脂には、難燃助剤として「アンチモニー」が添加される。 これら4つの鉱物は、そのほとんどを中国からの輸入に頼っている。資源エネルギー庁によると、タングステンの87%、アンチモニーに至っては94%を中国に依存している。 しかし中国政府は、昨年からレアメタルの輸出統制策を鮮明に打ち出し始めている。経済発展により、中国国内のレアメタル消費量が増加の一途をたどっているからだ。 これまで中国は鉱物資源の輸出を奨励するため、付加価値税の一種「増値税」を輸出時に還付していた。しかし還付率は段階的に引き下げられ、昨年9月には還付を撤廃。さらに、11月にはレアアース鉱石など110品目に最大15%の輸出税を課すようになった。今年1月からは、タングステンの中間原料「APT(パラタングステン酸アンモニウム)」にも5%の輸出税をかけるなど、統制範囲を拡大しつつある。 輸出数量も絞っている。2006年のタングステン輸出許可量は1万5800トンだったが、今年は3%削減する見込み。レアアースに関しても、今年の輸出量は10%程度減る見通しだ。 価格も高騰の兆しを見せている。昨年後半じりじりと値を下げていたAPT価格は、「今年1月だけで5%以上値上がりした」(レアメタル商社・光正の山本智史・開発営業部リーダー)。 こうした状況を受け、一部の企業は安定供給元の確保に乗り出した。超硬工具メーカーのタンガロイは昨年12月、江西省のタングステン粉メーカー「南昌硬質合金」への出資と技術供与を決めた。南昌硬質合金の筆頭株主である五鉱有色金属は、中国のタングステン製品輸出最大手。「資源確保力が決め手になった」(タンガロイ)。 次ページ以降は「NBonline会員」(無料)の方および「NBonlineプレミアム」(日経ビジネス読者限定サービス)の会員の方のみお読みいただけます。ご登録(無料)やログインの方法は次ページをご覧ください。 |
|||||||||
|
|||||||||
|