【ワシントン=有元隆志】米国務省のデーリー・テロ対策調整官は22日、北朝鮮に対するテロ支援国家指定解除問題について、「北朝鮮は(解除の)基準を満たしているように見える」と述べた。同調整官は日本人拉致事件が解除にあたって障害になることはないとの認識も示した。ロイター通信が伝えた。
米政府高官から北朝鮮に対する解除条件が満たされているとの発言が出たのは初めて。ただ、米政府当局者は発言について、産経新聞に対し「解除問題で米国の立場は変わっていない」と述べ、核計画の申告など非核化で進展がないままに解除に踏み切ることはないとの立場を示した。
デーリー調整官は「(拉致事件が)協議されていたとしても、北朝鮮は解除の基準を満たしている」と語った。
この発言は「(大韓航空機爆破事件のあった)1987年以来、北朝鮮はテロ行為に関与していない」との国務省の立場を示したものだが、同省は解除条件を満たしているとまで踏み込んでこなかった。
国務省内には、膠着(こうちゃく)状態にある核計画の申告問題で打開を図るためにも、北朝鮮が強く求めている指定解除に前向きの姿勢を示すべきとの声はあるが、調整官の発言はそうした意見に沿ったといえる。
一方、ライス国務長官は22日、レフコウィッツ北朝鮮人権問題担当特使が、ブッシュ政権中に北朝鮮が核放棄する可能性は低いと述べたことに関し、「彼は6カ国協議とは関係ない。(協議参加国が)彼の名前を認識しているか疑わしく、参加国が混乱するとは思わない」と不快感を示した。ライス長官が米政府内の他の当局者を批判するのは極めて異例。
長官は「彼には協議についての発言権はない。わたしはブッシュ大統領の見解をよく知っている」と述べ、6カ国協議を進める米政府の方針に変更はないと強調した。
レフコウィッツ氏は昨年8月、産経新聞のインタビューで、北朝鮮をテロ支援国家指定から解除するには、核問題だけでなく人権問題での進展も必要だと強調。日本人拉致事件に関しても、解決済みとする北朝鮮の姿勢を「容認できない」と批判していた。
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