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2008年1月24日

◎「熱狂の日」音楽祭 和洋兼ね備えた「音楽の都」に

 金沢市内でゴールデンウイークに開催される「ラ・フォル・ジュルネ金沢〜『熱狂の日 』音楽祭」を、この地域の音楽土壌を耕し、愛好者をさらに増やす起爆剤にしたい。

 フランス発祥の世界的なクラシック音楽祭であり、金沢は世界で六番目、国内では東京 に次ぐ開催地となるが、定着させるには既成イベントの誘致という発想を超え、自前の音楽祭にしていく工夫がいる。会期中のプログラムに邦楽などの「金沢らしさ」を効果的に取り入れ、和洋兼ね備えた「音楽の都」としての評価を高めていきたい。

 大型連休中の開催とあって観光客の集客効果が期待されるが、まず市民、県民が積極的 に参加し、「熱狂の日」を楽しみたい。金沢などでもクラシックやオペラなどの公演が増えてきたが、そうした音楽文化を支えるのは耳の肥えた鑑賞者である。生の演奏に触れることで聞き手が育ち、さらに一流の音楽を呼びこむ好循環を引き出すことが大事である。

 音楽祭は実行委の顧問に北陸三県の知事も就き、三県連携の広域イベントとなる。今回 は金沢、富山、福井駅でオープニングイベントが行われる。来年以降の継続へ向けては初回の手応えや協賛企業の支援の広がりが課題だが、北陸全体に熱気が広がる仕掛けをしていけば、北陸新幹線開業へ向け、この地域の新たな魅力になるはずである。

 音楽祭は金沢駅周辺の県立音楽堂や金沢市アートホール、もてなしドームなどが主会場 となり、大型連休中の七日間で八十公演が行われる。料金は五百円から三千円に設定され、半数以上は無料となる。今回のテーマはクラシック界で最もなじみのあるベートーベンで、初心者や子どもにも気軽に名曲に親しんでもらう狙いである。

 金沢では年末恒例のカウントダウンコンサートをはじめ、洋楽と邦楽の合同イベントが 定着してきた。ことし創立二十年を迎えるオーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)や、OEKと共演してもひけを取らぬ水準の高い邦楽が存在するからであり、和洋の音楽が刺激しあって共存するのは他の地域にない個性と言ってよいだろう。そうした特徴を生かしながら、東京とは違った金沢ならではの音楽祭にしていきたい。

◎曲がり角の日米関係 手入れを怠ってはならぬ

 米大統領選の有力候補であるヒラリー・クリントン上院議員が「日米同盟はアジア太平 洋地域での米政策の基盤」とする声明を発表した。クリントン氏は米中関係を最重視し、対日関係を軽くみているという批判に配慮したものであり、日本として歓迎すべき声明ながら、米大統領選の候補者の多くは日米同盟にさほど関心を示していない。両国関係の実態は冷却化や停滞が指摘され、一つの曲がり角に差しかかっている。

 福田内閣は国会対応に四苦八苦し、政治エネルギーのほとんどを奪われている感もある が、米軍普天間飛行場の移設問題など日米間の懸案処理にもっともっと汗を流してもらいたい。同盟関係といえども庭と同様、手入れを怠ると荒れてしまうという警鐘が現実のものにならないよう努力を続ける必要がある。

 福田内閣の下で、インド洋での給油活動再開が決まり、同盟関係を下支えする米軍駐留 経費負担(思いやり予算)問題も決着した。これによって日米関係は以前より落ち着きを取り戻したように見えるが、福田首相の「日米同盟とアジア外交の共鳴」という外交理念が米政権に十分理解されているとは言い難い。

 米側のいら立ちの大きな原因になっている普天間飛行場の移設問題は、政府と沖縄県の 対立が解けず、いまだに先の見えない状況が続いている。普天間飛行場の移設は橋本政権時代からの課題であり、既に十年以上が経過している。国内事情で計画が二転三転し、政府同士の約束をいつまでも果たせないようでは、首相がいくら日米同盟強化を叫んでも米側の信頼は深まらない。

 普天間飛行場の移設は沖縄駐留米海兵隊のグアム移転の前提であり、飛行場移設が進展 しない限り、沖縄の基地負担軽減という宿願も実現できないことを忘れてはならない。計画実現へ官邸の主導力を強める必要があるのではないか。

 また、日米が共同で取り組むミサイル防衛体制は昨年、海自イージス艦からの迎撃試験 に成功し、新たな次元に入った。しかし、運用に当たって欠かせない集団的自衛権の議論は置き去りにされている。自衛隊の海外派遣の恒久法と合わせて議論を前進させるときである。


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