7章[のぶくんの飛行機]第29話 ぼくたちの失敗(6)
「孝昭。そっちたのむ!」
僕は西条くんの後ろを追って外へ。
所詮、小学1年生ですから、西条くんと夕子ちゃんは、あっと言う間にミカちゃんに追いつきました。
「ミカ!待てよ」。
ミカちゃんを後ろから抱き上げる西条くん。
「お前・・・・」。
「胸ぺったんこなあー」。
小学1年生に無茶な注文です。
「サイジョー・・・」。
「サイジョー、天国あるよね?お父さん、そこにいるよね?」
「んー・・・」。
ちょっと考え込んだ西条くん。
「そーだなー。天国ないかもな」。
!
驚いたのはミカちゃんだけではありませんでした。
「天国さぁ。あんまりいいとこだと、みんな死にたがっちゃうだろ?」
「あ・・・」。
「せっかく生まれて来て、みんな死にたがったら、なんで生まれたかわかんねーじゃん」。
「ミカもさ。天国いいとこだったら死にたい?」
小首をかしげて、西条くんの話に聴き入るミカちゃん。
「みんな生まれてきて、短くってもそれなりにせいいっぱい生きてさ。みんな役割あるんだよな」。
「だって・・・じゃぁ、お父さんは?いないの?」
「んー。いないんじゃねーか?」
あくまでストレートな西条くん。
ミカちゃんは、また顔を歪ませました。
「俺もおととしさー。ミカとおんなじように父ちゃん死んじゃってさー」。
「うん」
「あれから一度も会ってねーもん。ミカは会った?」
「ううん」
「だろ?じゃぁ、母ちゃんには?」
「毎日会ってるお・・」。
「今、ミカになにかあってさ。守ってくれるのって誰だ?」
「・・・お母さん・・・・」。
「うん。ミカの父ちゃんさ。どっかでお前のこと見守ってくれてるかも知んないけど、お前にご飯食べさせるのも、守ってくれるのも、実際にそばにいるお前の母ちゃんだろ?」
「・・・・うん」。
「だからさ。お前は母ちゃん大事にしろよ。そこにいつもいてお前のこと守ってんだから」。
「・・・・お父さん・・・帰ってこないの?」
「天国あっても、あんまりもどってくる人って、聞いた事ないな。俺の父ちゃんも一度ももどってこねぇ」。
「・・・・・・・・」。
「でもミカが生きていればさ。お前の血も、頭も、目も。みんな父ちゃんのものだからな。今年さぁ、花が枯れたって、来年同じ花咲いてるだろ?同じ花じゃないけどな。おんなじように咲くだろ?」
「うん・・・・」。
「そりゃちょっとつらいだろうけどな。俺もわんわん泣いたくらいだから」。
「サイジョー泣いたお?」
「うん。泣いた泣いた。うわ〜〜〜〜ん、ってな。大声出して泣いた」。
「あはは・・・」
西条くんのヘンな顔に思わず笑い出したミカちゃん。
「サイジョー、つおいのに泣いたの?」
「泣くぞ。泣いて悪いってことねーから。うわ〜〜〜〜んって」。
「あはははははは」
「父ちゃんいなくってもさ。ミカのこと守りたい人いっぱいいるから。だいじょぶだ。天国なくっても」。
「神様は?いないの?」
「うーん・・・それはわかんないなー。でもな。もし神様がいたらさ・・・」。
「うん」。
「人間。誰も努力しなくなっちゃうじゃん。神様に運命まかせちゃってな」。
「うん」。
「ミカ、神様においのりするとご飯出て来るか?」
「ううん。お母さんがつくる」。
「ミカ、走らないで神様に祈って運動会で一等とれるか?」
首をふるミカちゃん。
「なっ。走らなきゃ1等にも3等にもなれないだろ?だから走るんだ」。
「うん・・・」。
「神様にお願いする前にさ。やるだけやんなきゃダメなんだよ。お前の父ちゃんだって、生きてるうちはそうやってがんばったんだ」。
「・・・わかったお・・・・」。
「なぁ」。
西条くんが僕と夕子ちゃんに向かって言いました。
「俺って、すっげーいいこと言ってねーか?」
ああ。上出来だよ。西条。「お前にしては」、な。
本日は2話1セットです。続けて第30話へどうぞ→
「孝昭。そっちたのむ!」
僕は西条くんの後ろを追って外へ。
所詮、小学1年生ですから、西条くんと夕子ちゃんは、あっと言う間にミカちゃんに追いつきました。
「ミカ!待てよ」。
ミカちゃんを後ろから抱き上げる西条くん。
「お前・・・・」。
「胸ぺったんこなあー」。
小学1年生に無茶な注文です。
「サイジョー・・・」。
「サイジョー、天国あるよね?お父さん、そこにいるよね?」
「んー・・・」。
ちょっと考え込んだ西条くん。
「そーだなー。天国ないかもな」。
!
驚いたのはミカちゃんだけではありませんでした。
「天国さぁ。あんまりいいとこだと、みんな死にたがっちゃうだろ?」
「あ・・・」。
「せっかく生まれて来て、みんな死にたがったら、なんで生まれたかわかんねーじゃん」。
「ミカもさ。天国いいとこだったら死にたい?」
小首をかしげて、西条くんの話に聴き入るミカちゃん。
「みんな生まれてきて、短くってもそれなりにせいいっぱい生きてさ。みんな役割あるんだよな」。
「だって・・・じゃぁ、お父さんは?いないの?」
「んー。いないんじゃねーか?」
あくまでストレートな西条くん。
ミカちゃんは、また顔を歪ませました。
「俺もおととしさー。ミカとおんなじように父ちゃん死んじゃってさー」。
「うん」
「あれから一度も会ってねーもん。ミカは会った?」
「ううん」
「だろ?じゃぁ、母ちゃんには?」
「毎日会ってるお・・」。
「今、ミカになにかあってさ。守ってくれるのって誰だ?」
「・・・お母さん・・・・」。
「うん。ミカの父ちゃんさ。どっかでお前のこと見守ってくれてるかも知んないけど、お前にご飯食べさせるのも、守ってくれるのも、実際にそばにいるお前の母ちゃんだろ?」
「・・・・うん」。
「だからさ。お前は母ちゃん大事にしろよ。そこにいつもいてお前のこと守ってんだから」。
「・・・・お父さん・・・帰ってこないの?」
「天国あっても、あんまりもどってくる人って、聞いた事ないな。俺の父ちゃんも一度ももどってこねぇ」。
「・・・・・・・・」。
「でもミカが生きていればさ。お前の血も、頭も、目も。みんな父ちゃんのものだからな。今年さぁ、花が枯れたって、来年同じ花咲いてるだろ?同じ花じゃないけどな。おんなじように咲くだろ?」
「うん・・・・」。
「そりゃちょっとつらいだろうけどな。俺もわんわん泣いたくらいだから」。
「サイジョー泣いたお?」
「うん。泣いた泣いた。うわ〜〜〜〜ん、ってな。大声出して泣いた」。
「あはは・・・」
西条くんのヘンな顔に思わず笑い出したミカちゃん。
「サイジョー、つおいのに泣いたの?」
「泣くぞ。泣いて悪いってことねーから。うわ〜〜〜〜んって」。
「あはははははは」
「父ちゃんいなくってもさ。ミカのこと守りたい人いっぱいいるから。だいじょぶだ。天国なくっても」。
「神様は?いないの?」
「うーん・・・それはわかんないなー。でもな。もし神様がいたらさ・・・」。
「うん」。
「人間。誰も努力しなくなっちゃうじゃん。神様に運命まかせちゃってな」。
「うん」。
「ミカ、神様においのりするとご飯出て来るか?」
「ううん。お母さんがつくる」。
「ミカ、走らないで神様に祈って運動会で一等とれるか?」
首をふるミカちゃん。
「なっ。走らなきゃ1等にも3等にもなれないだろ?だから走るんだ」。
「うん・・・」。
「神様にお願いする前にさ。やるだけやんなきゃダメなんだよ。お前の父ちゃんだって、生きてるうちはそうやってがんばったんだ」。
「・・・わかったお・・・・」。
「なぁ」。
西条くんが僕と夕子ちゃんに向かって言いました。
「俺って、すっげーいいこと言ってねーか?」
ああ。上出来だよ。西条。「お前にしては」、な。
本日は2話1セットです。続けて第30話へどうぞ→
サイジョーーー!!!!
泣かせるねぇ(>_<)えぇ男やぁ…。
女に生まれたら西条くんと結婚します☆
さてさて、のぶくんの方も読ませて頂きます。。
>ぷにょんさん
はい。30話でお待ちしてます。
そっかあ…
すっごく納得しました。
私たちはよく神様とか天国の何かを信じて、それを心の支えにして前に進んだりもするけど…
でも忘れちゃいけないのは、今の私を支えてくれる身近な人たちだよね。
ブルーになるとつい忘れがちだけど…
こんな事を高校生で言えちゃうなんて尊敬だよう(>_<)
私もがんばろっと!
この話の西条くんも
次の話の孝明くんも
自分より年下すぎる子供の目線と同じ目線で会話をしている様子がグッと来ました
普段おちゃらけていても
なかなか素直にそうできる若者って
少なくなってしまいましたよね
>みもりちゃん、よく来たね。
>こんな事を高校生で言えちゃうなんて尊敬だよう(>_<)
高校生で考えが深くないから言える台詞ですね。
みもりちゃん。「西条くんマーク」を持ってんですから、だいじょぶですよ〜。唯一ですもん。
お父さんがいない3人・・・
ミカちゃん、西条、あと一人・・・
知ってるのは、ママチャリですけど・・・
西条くん、大きな男だなぁ・・。
気持ちに言葉がついて来ませんが、子供にこういう目線で接してあげられる大人になりたいです。
30話へ急ぎます。
>フェニックスかめさん、さすがコメント大賞
ですね〜
>自分より年下すぎる子供の目線と同じ目線で会話をしている様子がグッと来ました
というか、精神年齢、ほとんど同じですからね。
同じ目線です。こいつら。
>2児の母さん
>ミカちゃん、西条、あと一人・・・
のぶくんです。
>ガンさん、登校確認〜
>西条くん、大きな男だなぁ・・。
そうですね。なかなかなもんでした。
特に子供あつかわせたら無敵でした。
31話でも大活躍しますよ。西条くん。
28話のどうしようもない状況からの見事な抜け方。
う〜ん。これだからぼくちゅう、好き♪
私がその場にいても思いつきもしない言葉ばっかりです。
すごいぞ!西条君、孝昭君!
西条くんの「今年さぁ、花が枯れたって、来年同じ花咲いてるだろ?同じ花じゃないけどな。おんなじように咲くだろ?」という言葉、覚えて僕もずっと持っていきます。
いつか誰かこの言葉が必要な人が必ずいると思いますんで。
>AIAIさん、こっち?
>私がその場にいても思いつきもしない言葉ばっかりです。
>すごいぞ!西条君、孝昭君!
いろいろ体験してるやつが言うと重み違います。
悪ガキは悪ガキなりに、ってやつですね。
>ガンさん こっちも
>西条くんの「今年さぁ、花が枯れたって、来年同じ花咲いてるだろ?同じ花じゃないけどな。おんなじように咲くだろ?」という言葉、覚えて僕もずっと持っていきます。
めちゃくちゃうれしいです。
ありがとうございます。
もうだめです。涙。。。。
西条くん。。。。
あなたは、小さい頃の辛かった時代があったのに、いえ、あったからこそこんな優しく、そして力強い言葉で、小さな女の子に話してやれるんですね。
嘘やごまかしがないから、しっかりと目を見て話すから(たぶん)、ミカちゃんもあの花火のときから西条くんが大好きなんですね。
ああ、今、西条くんに会いたい。。。。
>さっちゃん
そうですね。西条くんはとにかく子供にはやさしい子でした。
普通グレそうなものを、そうならなかったのは、西条くんの母親に大きな愛情があったからだと思います。
後の章で、西条くんのお母さんが登場する予定です。
西条君、いいこといいますね。
こういうときの西条君の言葉は、心の中にすとんと入ってきます。
西条君のお母様、きっと素敵なお母様でしょうね。
西条くんすごいですね。精神的に大人だと思いました
人間的には子供だけど、本当に魅力のある人だなぁと涙こぼしながらコメントしてます
僕もきづついた人に声をかけて、思いやれる西条くんみたいな大人になりたいと思いました
>よしくん 初登校〜
西条くんはモデルの人も子供好きで、今後も何度か「子供好きの天才」として本領を発揮します。
彼は大人というより、純真なんですね。
だんだんわかります。こういう心を失わずに大人になるのは、なかなかたいへんです。
▲---------
>りんごあめさん
西条くんの場合は、彼の純粋さを受け止めることのできる母親でなければこういう子にはならないでしょう。
それは現在においては、残酷なことであるかも知れません。