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社説:暫定税率の存廃 党利排した論戦不可欠
3月末に期限切れとなる揮発油税など道路特定財源の暫定税率の存廃をめぐり、「ねじ
れ国会」を舞台に与野党が激しい攻防を展開している。
必要な道路整備を行うための財源として現行税率を維持するのか、それとも撤廃して暮らしや経営を直撃しているガソリン代の値下げに踏み切るべきなのか。自民、民主両党の主張はそれぞれ聞こえはいいが、ともに欠けている視点がある。
暫定税率を10年間延長する税制改正法案を今国会に提出する自民党の訴えは予算確保に重点が置かれ、今後の道路整備を具体的にどう進めるのかという明確なビジョンが乏しい。延長する期間の根拠もあいまいだ。
対する民主党の撤廃案は、ガソリン価格の上昇を追い風に各種世論調査で国民の支持を得ているが、暫定税率廃止に代わる財源確保策が不明瞭(ふめいりょう)で、地方自治体の不安をあおっている。
両党とも、このまま税制の根幹の部分に踏み込んだビジョンを国民の前に示さないまま「世論」を取り込むだけの議論に終始しては、年内にも予想されている衆院解散・総選挙を意識した攻防とみられても仕方あるまい。党利党略を捨て、受益と負担の原則を考慮しつつ、何が国民にとっての利益となるのか、それぞれが明快な道筋を示してほしい。
原油価格高騰のあおりを受けて、ガソリンや軽油などの価格上昇が国民の暮らしや経営を圧迫している。国内の1世帯当たりの自家用車保有台数は、2006年3月末現在で1・11台と国民の足として欠かせない存在だ。とりわけ公共交通が脆弱(ぜいじゃく)な地方では、車がなければ通勤はもとより買い物や通院にも不便をかこつ。
もし暫定税率が廃止されれば、車に依存している国民や、トラック、バスなどの運輸業者が大きな恩恵を受けることは確かだ。事実、共同通信社が今月実施した全国緊急電話世論調査では、72・2%が暫定税率延長には反対している。
ただ、その一方で08年度地方財政計画に基づく最新の総務省試算は衝撃的だ。暫定税率が廃止された場合、本県の減収額は113億円(県68億円、市町村45億円)と大打撃となることが予想されている。税収総額に占める暫定税率分の割合(05年度決算)も、本県は8・0%と東京都を6・8ポイントも上回る。
地方の道路事業は、道路特定財源だけでは不足し、一般財源や地方債による借金で賄っている実態もある。全国知事会など地方6団体は民主党が主張する廃止案に反対する緊急声明を発表した。寺田典城知事も「行財政改革による対応では無理で、県の予算編成全体に影響が出る」との懸念を示す。
道路をめぐっては、国の先行投資で整備が進み、これ以上は不要だととらえる都市部と、生活関連道路を含めまだまだ整備が必要だとする地方との間にかなりの温度差がある。税収格差是正のための地方法人2税の配分見直しに続き、現行の議論のままだといたずらに都市と地方の対立を助長しかねない。国会では国民本位の冷静な議論と判断が求められる。
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