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【社説】

独法改革 決着先送りは禁じ手だ

2007年12月20日

 独立行政法人(独法)改革の政府内調整が大詰めだ。行革相と関係閣僚の折衝難航で官邸が打開へ乗り出したが、役人寄りの決着先送りはごめんだ。支持率低下の著しい首相の姿勢が問われている。

 国益よりも省益追求−。独法改革をめぐって、官僚が“本領”を存分に発揮しているようだ。今月に入って渡辺喜美行政改革担当相が関係閣僚に、独法の廃止・民営化などの決断を求めてきたが、官僚に洗脳されたかのように閣僚は軒並みゼロ回答だった。焦る官邸がいよいよ重い腰を上げた。

 独法は、国が直接実施する必要のない事業などを各府省から分離、独立させた機関だ。現在は百二法人あるが、日本万国博覧会記念機構のように役割を事実上終えたものや、赤字を垂れ流す事業を抱える法人が数多く残る。全体で年間三・五兆円もの税金が投じられることを考えれば、今年八月に閣議決定した「真に不可欠なもの以外はすべて廃止する」との方針は当然のことだろう。

 役人が抵抗する背景には、独法が天下りの貴重な受け皿になっていることがある。常勤役員の約四割がOBだ。しかも、関連会社とコスト節約につながらない不透明な随意契約を結び、その会社に再び天下るケースも少なくないという。

 整理合理化計画の原点は税金の無駄遣いをいかになくすかにある。なのに自らの痛みを回避する官僚たちの言い分が通っては話にならない。町村信孝官房長官と冬柴鉄三国土交通相の会談では、焦点の都市再生機構について三年後に組織形態を見直す案が突然浮上した。

 同機構が管理する賃貸住宅には所得の少ない高齢者など社会的弱者も安価な家賃で入居している。民営化で追い出される事態になるのは避けたい。そのためには、十分な安全網の整備などが不可欠となるが、こうした議論を深めることなく、単に結論を先送りしては批判を免れない。

 町村長官と若林正俊農相の会談では農林水産省所管の農業生物資源研究所など三法人の統合で合意した。農相は「サプライズだ」と語ったが、この程度の統合は誰の目にも当たり前と映る。福田康夫首相はこれで良しとするか。

 むろんすべてを廃止・民営化すればいいわけではない。求められるのは役人より国民本位のメリハリのある改革だ。それには「公」と「民」の役割をしっかりと峻別(しゅんべつ)することが大切となる。「官から民へ」の小泉改革もそうだったが、こうした点の議論が不十分なままだ。

 クギを刺しておく。この期に及んでの先送り策は禁じ手だと。

 

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