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独立行政法人  改革の断行が危うい

 こんな“及び腰”で、果たして改革はできるのか。
 独立行政法人(独法)改革に向けて政府の「行政減量・効率化有識者会議」は、都市再生機構(国土交通省所管)など計十一法人の廃止・民営化を打ち出した。
 ところが、正式な公表を拒んでいる。それも内閣府の記者会見場で、十一法人名を明記した資料を配布した後、回収するドタバタぶりだったという。
 これから渡辺喜美行政改革担当相と独法を所管する各閣僚との折衝が始まる。「具体名が先行すると各省庁の反発を招く」というのが、その理由らしい。
 折衝前から霞が関の抵抗に頭を悩ましているようでは、政府が年内にまとめる整理合理化計画に、どこまで廃止・民営化法人を盛り込めるか、疑問だ。
 独法は、公共性を持ちながらも国が直接に手がける必要のない事務や事業を各省庁から分離して、独立させた。
 だが、そこには所管省庁の権益が詰まっているのだ。何よりも「天下り」の有力な受け皿になっている。常勤役員の四割弱を官僚出身が占める。報酬水準も高く、中には省庁の事務次官級を上回る。
 ぶら下がる多くの関連法人(会社、公益法人)は独法の「天下り」先だ。税金無駄遣いの温床とされる随意契約は金額ベースで九割にも達する。資金と人の結びつきは強く、透明性を欠いている。
 小泉政権下での特殊法人改革では、多くの公団や事業団、協会などが独法への「看板掛け替え」で生き延びたとの指摘もあるほどだ。談合事件などを受けて、本年度限りで廃止が決まっている緑資源機構は、その典型であろう。
 独法は行政改革の聖域の一つだ。各省庁の抵抗は族議員も絡んでさらに激しくなろう。渡辺担当相の「突破力」に期待するにしても、密室の折衝で、やすやすと既得権を手放すはずはあるまい。
 担当相は先日、都市再生機構が所有管理する東京都内のマンションを視察し、民営化の必要性をアピールした。改革の断行には世論の「追い風」が欠かせないと判断したからであろう。
 まず、なすべきことは廃止・民営化方針を決めた独法とその業績評価を公表することだ。きちんと説明せずして、国民の理解と支援はとうてい得られまい。
 整理合理化計画には、類似業務を行っている法人の統合再編や地方への移管なども盛り込まれる。トップ人事や事業の事後評価の面で内閣の一元的な関与、一般競争入札の原則なども明記する。
 独法は国の運営交付金で多くを賄っているが、予算執行では自由裁量が認められているのが特徴だ。だが主務大臣の監督権限が強く及ばず、業務のスリム化、効率化などで裏目に出ている。
 独法の改革は「待ったなし」だ。政府は「真に不可欠なもの以外は廃止する」と閣議決定している。官邸主導で組織存続の是非を決断してもらいたい。

[京都新聞 2007年11月30日掲載]

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