再生紙偽装、背景に古紙争奪戦 中国に「買い負け」2008年01月19日19時26分 再生紙の古紙配合率をめぐる偽装が製紙業界で常態化していた背景には、中国との「古紙争奪戦」がある。紙の需要が伸びている中国向けの古紙輸出が増え、古紙価格が急上昇している。製紙各社は、古紙の調達コスト高の前に、無謀な営業がきっかけとなった偽装を改めることに二の足を踏んだ可能性が高い。
「再生紙の品質と配合率の両立は、そもそも難しい。現場が営業を優先させたのだろう」 王子製紙の篠田和久社長は18日の記者会見で94年には始まっていた偽装の経緯について、そう話し、「コスト競争と無関係」と断言した。だが、同じ会見で「正直言って(古紙を大量に買う)中国の影響もあり、古紙が集まりにくくなっている」とも漏らした。 古紙再生促進センターの資料から、古紙の07年の輸出量を推計すると、02年の2倍の約390万トン(11月末の実績に基づく)。00年の10倍で、その8割は中国向けだ。 中国では経済発展に伴い紙の需要が膨らんでいるが、古紙の回収率は3割と、日本の半分以下(05年)しかない。この結果、高値でも買ってくれる中国への輸出を増やしたい商社・古紙問屋と、製紙各社の間で、古紙の奪い合いが起き、価格は急上昇している。 例えば雑誌の古紙は07年11月には1キロ当たり11〜13円と、02年1月時点の2倍以上だ。 こうした状況を背景に業界団体の日本製紙連合会は「環境に優しい商品」の購入を国などに促すグリーン購入法について古紙の配合率を緩和するよう、環境省に要請していた。同省は、間伐材などの利用を前提に今春から認める方向だった。例えば、コピー用紙では100%から70%に緩和される予定だった。 だが、今回の偽装問題をきっかけに見直しは延期された。配合率そのものへの信頼が崩れ、「実態の把握が必要になった」(同省)ためだ。 仮に技術面でも、調達価格の面でも、古紙の配合率を高めることが困難なら、製紙各社は企業や消費者などの需要家に対して、そうした事情を説明すべきだった。だが、各社ともその努力を怠り、偽装を続けてきた。 偽装が明らかになった今となっては、製紙会社の主張に、顧客がどこまで理解を示すかは不透明だ。製紙各社は自ら首を絞めた格好だ。 PR情報この記事の関連情報ビジネス
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