◇契約、結婚、飲酒…影響大きく
「成人」の年齢を20歳から18歳に引き下げる民法改正の是非について、法務省は2月に法制審議会へ諮問する方針を固めた。07年の通常国会で成立した、憲法改正手続きのための国民投票法が投票権者を原則18歳としたことに伴うもので、約1年かけて議論し、結論を出す予定。改正されれば契約や結婚のほか、飲酒、喫煙など他官庁が所管するさまざまな分野に影響しそうだ。【坂本高志】
現在の民法は成人を満20歳と規定。そのうえで▽未成年者の契約(ローンなど)には親権者の同意が必要▽結婚の最低年齢は男18歳、女16歳で、未成年者の結婚には父母の同意が必要▽養子縁組で親になれるのは成人--などと定める。
仮に成人を18歳とした場合「取引できる年齢層が広がり、経済活動が促進する」との見方がある一方、若年者の保護に逆行する可能性を懸念する指摘もある。
また、「結婚に対する父母の同意が男だけが不要になる」ことも想定され、結婚最低年齢に男女差があること自体も議論になりそうだ。
このほか、20歳未満の飲酒や喫煙が法律で禁止されているのは民法を前提としている。20歳未満を少年とする少年法の見直し議論に発展する可能性もある。
関係者によると、今回の諮問は方向性を示さず、引き下げの是非は全く白紙という。同省幹部は「現代の18歳が大人と呼べるほど成熟しているか疑問もある。民法も少年法も、それぞれの法の役割を踏まえ、慎重に議論していく」と話している。
政府の「年齢条項の見直しに関する検討委員会」(委員長・二橋正弘官房副長官)が確認したところ、法律191本、政令40本、省令77本の計308本の法令が検討対象。この中でも影響が大きい民法と公選法を巡る議論の行方が注目される。
◇世界でも多数--棚村政行・早稲田大大学院法務研究科教授(民法)の話
成人を18歳とする国は世界の多数で、日本も合わせていいと思う。成熟度と言うが、30歳でも幼い人はいる。むしろ法的に大人と扱うことで責任を自覚させる効果もあるのではないか。
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◆各国の成人年齢◆(06年の国会図書館調査などから)
▽成人年齢を18歳とする主な国
フランス、ドイツ、イギリス、アメリカ(多くの州)
▽同15歳
イラン
▽同20歳
タイ
▽同21歳
マレーシア
◇結婚最低年齢
イギリス=男女とも16歳▽ドイツ、フランス、アメリカ(大半の州)=男女とも18歳
毎日新聞 2008年1月23日 東京朝刊