◇医療体制、再構築を
大阪にへき地はありませんが、ここ数年「医療へき地」が顕著になりました。例えば消化器専門の内科医がゼロになる病院が南部にいくつかあり、しわ寄せが救急患者の受け入れにも影響しています。原因は医師不足ですが、すべて国任せでいいと言うわけでもありません。府の取り組みも大切です。
救急隊と医療機関の連携を強化するのは、府の役割でしょう。また救急隊に搬送可否情報を提供する「府救急医療情報センター」のメンテナンスも必要です。大阪では1日に平均200件の照会がありますが、リアルタイムの情報提供が不十分で、改善が求められています。
また産科救急で医療機関を受診しない妊婦が問題になっていますが、府医師会では受診の公費補助を5回に増やすよう府に要望しました。医師不足対策では、医師の士気を高める施策や、結婚、出産した女性医師が働きやすい環境づくりに取り組むべきです。
大阪は全国で最も医療整備が進んだ地域の一つです。しかし自治体財政は厳しく、国の医療費抑制政策と同様、資本の論理で病院閉院や縮小に追い込まれる恐れがあります。府内にある26公的病院の大半は、自治体からの繰入金を投入しても赤字です。府の成人病センター(大阪市)や、母子保健総合医療センター(和泉市)など、がん治療や周産期医療で全国に誇る病院も、例外ではありません。これらは、不採算の政策的な医療施設ですが、他病院のモデルでもあり、より高いレベルを目指すべきでしょう。
府民の健康を守るためにも、新知事には医療体制の再構築と医師不足対策をお願いしたい。誰も具体的政策に言及していないのは残念ですが、曲がり角にある医療の立て直しには強いリーダーシップを持つ人が必要です。【構成・砂間裕之、写真・懸尾公治】=つづく
==============
■人物略歴
◇さかい・ひでお
1944年生まれ。大阪大医学部を卒業後、大阪府立病院、西宮市立中央病院、堺市立堺病院を経て、89年に開業。98年に府医師会理事、04年から副会長を務める。専門は、消化器外科。
毎日新聞 2008年1月22日 大阪夕刊