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2008年01月23日(水曜日)付

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ガソリン税率―政府案も民主案も反対だ

 ガソリン税を下げるのか、下げないのか――。通常国会の焦点になっているガソリン税の暫定税率の延長問題は、表面的にはそういう選択だ。

 レギュラーガソリンの価格は原油高で1リットル154円ほどに上がっている。暫定税率(上乗せ分)を3月末の期限で廃止すれば、これが約25円下がる。消費者にとってありがたい話ではある。

 だが、もう少し深く考えてみたい。日本の財政や地球環境からとらえれば、政府・与党の「延長案」も、民主党の「廃止案」にも、いずれも賛成できない。

 私たちの考え方はこうだ。

 日本の財政は主要国で最悪の水準にある。高齢化で膨張していく社会保障費をそこから生み出さなくてはならない。限られた財源を優先順位をつけて使う。そのためには、ガソリン税を中心とした道路特定財源を、医療や教育にも使える「一般財源」とすべきだ。

 道路財源が自動的に入ってくるため、本当に必要な道路が吟味されずに予算がつき、利権の温床にもなってきた。その構造を正す機会にもなる。

 また、日本のガソリン価格は「石油がぶ飲み社会」の米国よりは高いが、先進国の中でまだまだ低い水準だ。地球温暖化防止のためガソリン消費を抑えようというときに減税するのでは、温暖化防止に逆行することになる。

 そうした事情を考えれば、原油高の中ではあるが、ガソリン税の水準を維持することを我慢できないだろうか。

 ところが政府案は、特定財源のまま暫定税率を10年間延長する。地方にはまだまだ道路が必要で、地域間格差を減らすためにも、10年間で59兆円の道路整備を進める。その財源にするという。

 一般財源化を阻むための「道路建設ありき」だ。とても認められない。

 一方の民主党は、一般財源にすると同時に、暫定税率を全廃するという。

 全廃すると、国と地方で合計2.6兆円の税収減となる。税収がほぼ半減するが、それでも地方の道路工事は減らさないと言うのだ。まさか国の方をゼロにもできまい。となると、どう工面しても財源が不足するに違いない。

 「一般財源化」と言ったところで、現実には、福祉などに使える一般の財源を、逆に道路へ注ぎ込むことになるだろう。上乗せ税率全廃のツケが、やがて他の負担増や公共サービスの切り下げとなって回ってくるのではないか。これでは、あべこべだ。

 野党のなかには、暫定税率を廃止して環境税を導入するとの主張もある。この視点は大切だ。エネルギーへ広く課税する環境税を設け、ガソリン税の一部をそれへ組み替えることも考えていい。

 与野党の駆け引きで3月末まで決着せず、ガソリン税が下がったり上がったりする事態は避けたい。そんな愚を犯さぬよう、与野党は環境税まで視野に入れて法案修正のテーブルにつくべきだ。

公立中の夜間塾―模範答案ではないけれど

 大手進学塾が、夜間や土曜日に公立中学の教室で授業をする。一昔前なら考えられなかったことだろう。

 東京都杉並区の和田中学で、この週末から始まる予定の試みだ。ところが、都教育委員会から物言いがついた。

 塾と学校の連携は昨今、それほど珍しいことではない。ただし、授業料を自治体がほぼ負担し、希望すれば全員が受けられるというのが普通だった。

 今回の授業は、対象を成績のいい子に絞っている。授業料は通常の半額とはいうが、国語と数学の週3回で月1万8000円、土曜日の英語を加えると2万4000円を家庭で負担することになる。

 希望者が全員受けられるわけではなく、料金も決して安くはない。公立学校の教育の機会均等という原則からはずれているのではないか、というのが都教委の主な指摘だ。

 これをどう考えればいいのか。学校の言い分を聞いてみよう。

 藤原和博校長は、リクルートから転身した民間人校長の先駆けだ。保護者や地域の人々による地域本部を設立し、ボランティアによる土曜授業などによって、落ちこぼれそうな子たちの学力の底上げに努めてきた。

 今回は成績のいい子をさらに伸ばすのが狙いだ。学校ですべては教えられないので、塾と連携する。授業料を半額にすることで、多くの生徒が通いやすいようになる。それは家庭の収入による学力格差を少しでも是正することではないか。藤原校長はそう主張する。

 公立中学には、私立と違ってさまざまな子どもが来ている。学力の差も大きい。落ちこぼれ対策の補習をするとともに、できる子をもっと伸ばそうという試みは評価されていい。

 見すごせないのは、かなりの授業料を取ることだ。通常の半額だから、家庭の事情で塾に行けなかった子が通えるようになる一方で、半額さえ払えない家庭もあるだろう。学校の場で新たな格差を生み出すことになる心配もある。

 家庭の事情で夜間塾にも行けないという子が出るとすれば、なんとかしなければならない。この塾は実験的に始めてもいいが、家庭の負担が減るよう、さらに知恵を絞ってもらいたい。

 それにしても、今回の塾との連携で考えさせられるのは、いまの公立学校を取り巻く教育環境の貧弱さである。

 いまや小学生の4割、中学生の6割が塾に通う。それは学校での授業が不十分だということを示している。

 本来は塾に頼らずに、学力を底上げし、考える力を伸ばすことが学校のあるべき姿である。だが、それが現実には難しいことを認めたうえで、塾の助けを借りようというのが今回の試みだろう。

 これが学校や教師への刺激になって、学校の再生につながるのか。単なる塾への場所貸しに終わるのか。そうした視点でも、注目していきたい。

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