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アーケード街の頭上を通過する列車=佐世保市島瀬町、四ケ町商店街
 アーケードまたぐ列車

 ゴトン、ゴトン―。買い物客でにぎわう佐世保市島瀬町の四ケ町アーケード街の上を松浦鉄道(MR)の列車が通り過ぎる。地元っ子にとっては見慣れた街の光景だ。

 最寄りの佐世保中央駅は新駅として一九九〇年三月開業。全長一キロに及ぶアーケード街に直結し、歓楽街にも程近い。佐世保川沿いには緑豊かな佐世保公園、ニミッツパークがあり、市民の憩いの場になっている。

 同駅のホームは見た目は小さいが、一日の乗降人員は千人に上る。アーケード街の商店主らが「集客増」の願いを込めて早期開設を求めたのもうなずける。近くで五八年からアクセサリー店を営む的野太郎さん(76)は「格段に便利になった。遠方のお客さんにも来てもらえる」と言う。

 次の中佐世保駅まではわずか二百メートルの距離。高架下では約十店舗が営業している。その一つ、中華料理「喜楽」は故中野熊五郎さんが戦後間もない五〇年代に開店。「おやじは屋台でラーメンの作り方を習ったようです」。今は一人息子の裕一さん(42)が二代目として味を受け継ぎ、安くてうまい定食類が人気だ。

 午後十一時すぎ、佐世保中央駅のホームではほろ酔いかげんの人たちが佐世保発佐々行きの最終列車を待っていた。ベンチでは携帯電話のメールに夢中の若い男女。佐世保市相浦町のOL(23)は「時計を眺めつつお酒を飲んでました」と笑顔で話す。終列車は瞬く間に満席となった。(文・平義彦、写真・高野英芳=佐世保支社)

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【メ モ】  アーケード街は四ケ町、三ケ町両商店街にまたがり、店舗数は二百軒に上る。毎年一月二日早朝の「初売り」は有名で、夜明け前から客でごった返す。近くの島瀬公園や松浦公園では年中、多彩な催しが繰り広げられている。
2002年6月9日掲載

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