◎強まる景気減速懸念 景気対策に減税も選択肢
世界的な株安に歯止めがかからず、足元の景気の減速懸念が強まっている。投資家が弱
気になり、ろうばい売りが株価の下げ足を速めている状況を改めるには、景気の後退を何としても食い止めるという政府の強い意思とメッセージを、景気対策で裏付ける形で市場に発する必要がある。
福田康夫首相にまず望みたいのは、消費税率の引き上げ不可避論を断固否定し、社会に
広まった増税ムードを完全に取り払うことである。さらに輸出に頼るだけでなく、内需も活発な経済にするために個人消費を刺激する政策も求められる。
そのためには、たとえば個人所得税や住民税の定率減税の復活を考えてもよいのではな
いか。ブッシュ米大統領もサブプライムローン問題による景気の悪化を阻止するため、個人所得税の減税と企業の設備投資促進税制の拡充を柱にした十六兆円規模の緊急経済対策を発表している。企業税制では、主要国の中で最も高い水準にある法人実効税率の引き下げも選択肢に挙げられよう。
減税によって一時的に税収が減少しても、歳出の見直しや特別会計の積立金、剰余金の
活用などで補うことが十分可能なはずである。財政再建論議では、恒久的な財源確保の必要性が叫ばれるが、政府予算が単年度主義で年度ごとに編成されることを考えれば、財源は未来永劫のものでなければならないという観念に縛られる必要はない。
与野党の論戦が始まった国会でも経済の成長戦略を大いに論じてもらいたい。与野党の
対立が激化し、国政の停滞が続けば、「日本株離れ」に拍車がかかる恐れもある。日本株離れの背景には、構造改革の遅れや日本の成長率の低さを嫌って外国人投資家が売りに回っていることもあるという。政治が予算の分配論ばかりに傾き成長論に背を向けていては、さらに市場の失望を買うことになりかねない。
政府の経済財政政策の中期方針を示す「進路と戦略」では、都市部と地方が支え合う「
つながり力」と「環境力」を経済成長のカギとしている。福田首相は施政方針演説の中で、革新的技術創造戦略やグローバル戦略などを掲げたが、肝心なのは抽象論にとどまるこうした成長戦略を具体化することである。
◎団塊世代は警官も 捜査力低下防ぐ再任用を
団塊の世代の大量退職が二〇〇七年度から始まった。社会の安全を守る警察官もその例
外ではなく、ベテランの大量退職による捜査力の低下などが懸念されるため、石川県警は退職警察官の再任用を新年度にはじめて導入する方針を決めた。
団塊の世代の大量退職となると、富山県警にしても同じであり、同県警では一足早く〇
七年度から退職した捜査畑のベテランを嘱託として二人採用し、「捜査実務伝承官」として配置している。
石川県警によると、今年度から二〇一七年までの十年間で全警察官の四割強にあたる約
八百人が退職する。言葉をかえると、十年後には半数近くが入れ替わることになるわけだ。若手をベテランに育てるには経験を積ませるばかりでなく、捜査を中心に警察活動の急所をぴしっと押さえた指導がどうしても必要である。
同県警はこれまで若手警察官が出身大学を訪問し、優秀な後輩をリクルートしたり、現
役のベテランを「技能指導官」に任命したりして人材の確保や育成に努めてきた。
さらに新たに若干名を再任用して若手に対する指導を強化することにしたものだ。
たとえば、捜査のベテランともなると、一見、大人が忍び込むことができないように見
える小さな窓でも、犯人が窓枠をつくる仕事に従事した経験があれば、巧みに忍び込むなど、職業からくるクセを的確に見抜くことができるといわれる。
強い正義感や礼儀正しさなどはいうまでもなく、警察官にはいろんな知識が求められる
のだ。
犯人の心理を洞察するような人情の機微に敏感であることなども不可欠である。挙動な
どに不審な点を見いだす能力も必要である。加えて、調書を素早く正確にまとめる文章力もいる。
技能や対人関係を大事にする民間企業では団塊の世代の大量退職が始まる年にちなみ、
この大規模な世代交代を「〇七年問題」と呼び、定年の延長や希望者の再雇用などの手を打ってきた。後に続く世代にノウハウを伝えることが大事なことでは警察も同じだ。指導強化のためのベテランの再任用は望ましい。