福田康夫首相の施政方針演説などに対する各党の代表質問が始まった。先の臨時国会に続き衆参で与野党の勢力が異なる「ねじれ国会」を舞台にした論戦の第二幕のスタートといってもよい。
言うまでもなく今国会は二〇〇八年度予算案と同関連法案の審議が中心となる。しかし、先週の自民党、民主党の党大会でそれぞれ迫り来る次期衆院選を一大政治決戦の場と位置付け結束強化を訴えたばかりだ。その熱意がそのまま国会に持ち込まれたのか議場はやじが飛び交い、緊迫した展開となった。
一つ残念なことがある。質問の一番手に政権交代を掲げる民主党の小沢一郎代表が立たなかったことだ。党トップの姿勢として疑問があると言わざるを得ない。代わって登壇した鳩山由紀夫幹事長は福田内閣と与党を「危機意識が見られない。政権から転落する恐怖と焦燥感だけだ」と批判、早期解散・総選挙を要求した。福田首相は「今は解散よりも国民のために最善の結論を得ることが肝要だ」とかわしたが激突国会の開幕を思わせるに十分だった。
「ガソリン国会」の最大の争点は道路特定財源の揮発油税などの暫定税率維持を盛り込んだ税制改正法案の取り扱いだ。三月末で期限切れとなる。政府・与党は暫定税率の適用を十年延長、今後も道路特定財源のほとんどを道路建設に充てようとしている。
鳩山幹事長は「道路特定財源を社会保障や教育などにも使えるように一般財源化し暫定税率は廃止すべき」と強調した。暫定税率廃止でガソリン価格の引き下げを求めている。福田首相は「国民生活に必要な道路整備を実施するため現行水準を維持させてほしい」と述べ理解を求めた。一方、自民党の伊吹文明幹事長は代表質問の中で歳入確保の重要性に触れながら、野党が多数を占める参院で法案が否決されたり審議が引き延ばされることを強くけん制した。早くも暫定税率の「延長」、「廃止」をめぐって政府・与党と野党は頭を下げ完全に角を突き合わせてしまった。
与野党の思惑や駆け引きばかりが目立ち論議が深まらなかった新テロ対策特別措置法審議のような失敗は繰り返してはならない。福田首相は施政方針演説で国会運営について「与野党がよく話し合い結論を出し国政を動かしていくことこそ政治の責任だ」と対話重視の考えを示した。今後、審議停滞を打破する具体案は福田首相から提示すべきだろう。今国会はガソリンだけでなく経済対策、年金、温暖化対策など課題が山積していることを忘れてはならない。
原爆症認定基準の見直し問題をめぐって厚生労働省は二十一日、原爆症の審査をしている「障害認定審査会被爆者医療分科会」に対し、積極的に原爆症と認めるとした新認定基準の原案を示した。分科会は三月末までに新基準を策定し、四月以降の運用を目指す。
これまで厚労省は、放射線の影響で特定の病気になる確率を数値化した原因確率を重視してきた。基準は厳しく、原爆症と認定され医療特別手当を受給している人は、約二十五万人いる被爆者健康手帳所持者のうち二千二百人にとどまる。
原因確率を使った審査では、残留放射線の影響が過小評価されるといわれる。被爆者らが認定を求めて各地で起こした集団訴訟の判決も、原因確率を機械的に適用すべきではないと指摘していた。
分科会に示された新基準の原案は、従来の方針を全面的に改め、「爆心地から約三・五キロ以内の直接被爆」「投下後、約百時間以内に爆心地付近に入った」「投下から百時間以上経過後、爆心地付近に一週間程度滞在した」のいずれかに該当する被爆者ががんや白血病などを発症した場合は積極的に原爆症と認定するとしている。原因確率は事実上撤廃されたといえる。
新基準での認定審査が始まれば、年間認定者数は最大で現在の十倍程度まで増える見込みだ。各地の原爆症認定訴訟の原告約三百人の多くも救済されるとみられ、原告側からは訴訟の全面解決への第一歩と評価する声が聞かれる。
ただ、原告の一部は新基準でも認定は困難とされる。原告側に「被爆者を線引きする」との反発が出かねない。被爆者は高齢化が進むだけに、国は認定拡大に向け、さらなる検討が必要だろう。
(2008年1月22日掲載)